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ガン患者への「癌に食事療法、健康法、民間療法は効果がない」発言は自己満足にしかならない

思うこと

前回のエントリーで食事法や健康法について何も触れていないのに「それは、これは癌に効かない」とブクマに書く人があらわれた。

 

長文書いたから斜め読みする人が出るのは仕方ない。わたしもするもの、斜め読み。うむ。

 

こういう発言っておろおろしてると他意なく反射的にしちゃうこともある。でもこれは善意から出たものであっても、結果的に言ってる人の自己満足の押し付けにしかならない。言われた側はびたいち救わず、慰められず、癒されもしない。負担でしかない。

 

特定の健康法の中断をすすめることが妥当なのは、ヒ素を飲むとか処女の生き血をすするとか、ある種の療法が肉体的に有害なことが明白か*1、社会的な制裁対象になる場合、また時間や体力、経済的に負担が大きく、治療以外の生活が成り立たなくなる場合だけだ。

 

医療もふくめて癌患者を対象にした商品は高額なものが多い。また平時だったらとてもほしくならないものが多い。なので金額を聞いた瞬間止めたくなる人もいる。でも自分のお金でマカオで美女をはべらせて札束をばらまくのも自由なら、好みの療法にお金をかけるのも個人の自由だ。これに意見できるのは家族だけで、同じ船にいない人のそれはアドバイス罪にほかならない。

  

しかし問題は口出しする権利があるかないかだけでなく、この種の発言がまったく見当違いだということだ。どうして食事療法や健康療法、民間療法に取り組む癌患者に「それは、これは癌に効かない」というのがお門違いなのかを書くよ。

 

癌患者もあなたの同じ肉体を持っている

ご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、ガン患者も怪我をします。注射したあとには血が出るので止血テープを貼ります。お医者様も看護士さんも「止血したって癌は治らないから意味がない」とは言いません。

 

またガン患者も何らかの形で呼吸をし、排泄をし、食事をして栄養を摂って眠ります。それらが順調なら快適さが増しますし、まずければ生活に苦労があります。

 

食事が難しくなれば摂取しやすく消化しやすい食事、量が少なくても栄養価の高い食品と調理法を選びます。これが食事療法です。

 

また呼吸や排泄が難しくなれば肉体を動かしたり、外から力をかけたりして楽になる方法を探ります。これが運動療法です。

 

ところが、何ら病気をしていないときに健康法に励むことをやめさせようとする人はあまりいませんが、癌患者とその家族が食事や運動に気遣い、血行を促進する健康施設や健康器具を活用し始めると、「食事療法や健康食品は癌に効果がない」とドヤ顔で、あるいはお通夜顔で言い出す人があらわれます。

 

食事と睡眠、呼吸と排泄が楽になるように創意工夫をこらすのをやめろ。これは、言い換えれば「息をしたって癌は治らないから呼吸をやめろ、排泄したって癌は退縮しない」と言っているのと同じです。

 

問題はガンが退縮し、消滅するかどうかではありません。

 

生きている間、なるべく楽に呼吸をし、食事を摂り、排泄して眠るために役立つかどうかということです。なぜなら生きている限り、人は誰でもなんらかの方法で呼吸して、睡眠と食事をとり、排泄しなければならず、癌患者は死人ではないのです。

 

癌患者もその家族も、癌を治すために生きているのではありません。おそらくあなたもそうですよね? やっても癌が完治する保障がないということは、気に入った活動を止める理由にはなりません。

 

玄人も見当違い発言をする

このような見当違い発言をするのは素人だけではありません。医療従事者であっても善意と、ときにある種の正義感から患者とその家族が模索する療法をやめさせようとすることがあります。もしかしたらそれを見た素人が真似をして、自己満足の押し付けをしているのかもしれません。

 

たとえばこんなことがありました。

最近は身体の状態を改善し、免疫を向上させるものには必ずといっていいほど「アンチエイジング効果がある」と添え書きがあります。わたしたちが選んだ健康法の中には美容目的で実施されているものが数多くあります。*2

 

あるときわたしたちは医療従事者でなければできない施術を受けるため、エステサロンへいきました。担当の医師は若く見栄えのいい男性でしたが、問診票の来院目的欄でもちおが癌であることを知ると、すっかりお通夜顔で言いました。「これは癌には効果がない」。

 

人のいいもちおはガン告知以来、このようなお通夜顔の医師を気遣う癖がついており、相手の言い分を受け入れつつ、専門医の診断を受け、治療スケジュールがすでに組まれていること、また効果が不明瞭なことは承知した上で、それでも実施してほしいのだと説明しました。しかし100%自己負担で医師の説明に納得したことを伝えても、医師は癌の三大治療について繰り返すばかりでした。

 

それでわたしは言いました。
「わたしもエステに一回いったくらいで癌が完治するとは思っていません。わたしたちは身体の状態がよくなり、日々の暮らしが少しでも楽になるようにここへ来たのです。まともに食事も取れない状態でそのような苛酷な治療に臨むのは不安です。」


医師はようやく別室に案内して広告通りの施術をしてくれました。

 

癌の権威と自負している漢方医に会いに東京へ出たこともありました。食生活に話が及んだとき、ふとした会話からふいに医師の目つきは険しくなり、とつぜん「玄米菜食とか、あれ嘘やからな」ときつく言われました。

 

癌に対する食事療法として玄米菜食がとても人気があります。癌患者に限らずそれで調子がいいという人もいるのですから、それが身体に会う人もいらっしゃることでしょう。中医学の医師が指導する食事療法とは食い違うところがるとしても。

 

わたしは特定の食事方法を実行するかどうかは癌が完治するかどうかという問題ではないと思います。それが当人の身体とライフスタイルに合うか、何より当人がそれを望むかどうかではないでしょうか。それは癌患者でも、そうでない人であっても同じです。

 

癌に効果があるとされる食品にアレルギーがあれば適切とはいえません。逆に効果がない、有害だとされるものであっても、それ以外何も口に出来ないときは10年先の命ではなく、今日、明日の命のためにそれで食いつなぐこともあります。そういう場合、健康食品は「栄養補助食品」ではなく、主食なのです。


「普通の食事+健康食品やサプリ」とは限らない

もちおは一時期ほとんど何も食べることができませんでした。普通サイズの皿を見るだけで気持ち悪くなり、また出されたものを食べきれないことで不安が増します。ほんのひとくちずつ、お猪口や醤油皿に惣菜を並べ、デミカップにお汁を添えた食事はお雛様のお膳のようでした。本当に食事のたびに怖くて悲しくてたまらなかった。

 

検査の放射線被ばくの影響についてはさまざまな意見がありますが、被爆系の検査を受けるたびにもちおの体力は驚くほど消耗しました。抗がん剤の影響たるや、これがなぜ認可されるのかわたしには理解できないほどです。

 

そういう状況でいわゆる健康食品、栄養剤やサプリメントは活用されているのです。

 

健康食品に効果がない? 何の効果が? 癌が完治しない? だからなんなの。あなたはスプーン一杯のしぼり汁すら飲み込めなくなったら、何から栄養を摂るつもりなの? 病院食? 点滴? それはちょっと現代医学と医療体制に甘い期待をしすぎているんじゃないかと思うわ。*3

 

「ほとんど栄養にならない」?

 

あのね。他人からしたらありふれた病人であっても、家族にとってはほんのわずかでも栄養になるなら有り金はたく甲斐のある人なのよ。

 

抗がん剤はがんを治さない」とはどういう意味か

「癌に民間療法は効かない。手術、抗がん剤放射線のいわゆる三大治療だけが医学的に認められたもので、それ以外は金と時間の無駄」とおっしゃる方に知っていただきたいことは、多くの抗がん剤は癌を退縮させる目的で作られたものではないということです。これは医師からもはっきりいわれます。

 

抗がん剤は癌細胞を含め、体中のあらゆる細胞の増殖を防ぐことを目的に作られています。癌細胞にも寿命があります。またNK細胞など免疫が癌細胞を殺します。このような働きが癌の増殖が止まっている間に起きれば、結果的に退縮が期待できるのです。

 

つまり抗がん剤を摂取しても、癌細胞の増殖が止まっている間に免疫が働かなければ癌は減らないのです。

 

抗がん剤を受けるにしても、受けないにしても、結局は免疫を上がるかどうかの問題なのです。抗がん剤は増殖が止まることを期待して投与されますが、免疫の働きを激減させます。抗がん剤を投与している間、免疫を強化できるかどうかは大きな差異をもたらす問題なのです。

 

抗がん剤か(食事法、健康法を含め)民間療法か」という問題ではありません。どういう状況であってもわたしたちは各自免疫を強化する必要があり、癌患者にとってはそれが特に重要な、文字通り生きるか死ぬかの問題なのです。そして一般的に病院からその種のアドバイスを期待することはできません。*4

 

癌患者にもあなたにも寿命はある

わたしたちは誰でも息をして、食事をして、排泄をして、眠ります。どうしたらそれがスムーズになるかを考えるのが健康療法であり、食事療法、また各種民間療法です。つまりわたしたちは誰でも自分なりの健康法を実施しながら生きているのです。

 

あなたにはあなたの健康法があるでしょう。他人に横から「その食事はあなたを不老不死にすることはできないよ」「トイレなんかいったって永遠に生きられない。これは医学的に証明されている」といわれる必要があるでしょうか。

 

人は永遠に生きるためでもなく、病を治すためでもなく、日々少しでも健やかに安らかに暮らすために生き方を模索しています。それは癌患者もその家族も同じです。

 

第一、ある行為が癌の完治に寄与するかしないかなんて、誰にわかるでしょう。あなたが神さまなら別ですよ。そうじゃなければ、匙を投げるくらいしかできなくなったお医者さんの真似なんかしたって、ひとのちからにはなれないわ。

 

kutabirehateko.hateblo.jp

 

お見舞いありがとうございます。活用させていただきます。

 

*1:だけど抗がん剤なんかあれだけ有害さが明白でも使うから、究極的には当人の好みの問題だよね。

*2:たぶんもちおにつきあってそれらを実行しているわたしは三ヵ月後くらいにめちゃくちゃきれいになっているはず。

*3:「1パックで一日分のカロリーが摂れる」といったゼリー系飲料も、飲みこんだあとに動機がして横にならずにいられないこともあった。抗がん剤がはじまってからは妊婦のように香りや食感に敏感になり、好きだったものをまったく受け付けなくなったりもした。サプリも錠剤の形状、大きさ、匂いで飲めたり飲めなかったり

*4:手洗いうがい、マスクをしなさい、体を冷やさないようにがせいぜい。これは感染症を防ぐ目的であって免疫を向上させるためではない。