電力自由化とGIS、地域データ利用で顧客開拓やプロモーションの効率化
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2016年03月30日
一般社団法人エネルギー情報センター
GISとは地理情報システム(Geographic Information System)の略称です。地理情報システムは、位置や空間に関する様々な情報をデジタル地図上に重ねて情報の分析や解析、可視化などを行うシステムです。2016年4月からの電力自由化における、GISの活用法を海外の事例を併せて見ていきたいと思います。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)
地理情報システム(GIS)とは
地理情報システム(GIS)は、位置や空間に関する様々な情報をデジタル地図上に重ね、情報の分析や解析、可視化などを行うシステムです。文字や数字、画像などの情報を重ね合わせ地図として可視化することで、いままで得られなかった多面的な分析結果や新たな洞察を得ることが出来ます。
日本でのGISに関する本格的な取組が始まったきっかけは、平成7年1月に発生した阪神淡路大震災です。緊急時に被害状況などを確認しようとした際に、各機関が持つ地図がデジタル化されていなかったり、規格が違っていたりなど、重ね合わせが出来ない課題が浮上しました。これらの反省から、政府や自治体はGISの普及に必要な施策を開始しました。
GISの応用例、カーナビ利用や上下水道の管理、防災まで幅広く
一番身近な応用例としては、カーナビゲーションの条件に応じたルート検索(例:有料道路回避ルート、渋滞回避ルート)、最寄りのスポット検索(例:レストラン、駐車場、ショッピングモール)などです(図1)。
図1 最短経路の分析イメージ 出典:JACIC
公共事業や上下水道の管理、防災対策においてもGISが活用されています。例えば、防災施設の分布、一人暮らし高齢者の分布、老朽木造住宅の分布などの統計データと航空写真などの画像データを重ね合わせます。結果、インプットした様々な情報の関連性が可視化され、地域防災計画の策定やハザードマップの整備などが可能になります(図2)。
図2 災害対策におけるGIS活用 出典:国土交通省
電力自由化とGIS
電力自由化関連のビジネスでは、発電事業者はできる限り効率的に発電を行うためにGISを活用し、発電設備適地選定、発電所建設の管理、配電網のルート選定などを行うことが出来ます。例えば、太陽光発電所を設置する際、建物の高さ・地形・周辺環境などを考慮して日射量解析を行うことが可能です(図3)。
風力・バイオマス発電においては、地形・風力データなどを組み合わせ発電設備建設時のリスクやデータ管理、適切な建設場所を選定できます。
図3 日射量分布マップ 出典:National Renewable Energy Laboratory
電力の顧客開拓をGISで効率化、事業拡大やプロモーションにも
電力会社は電力システムの稼働状況や新規顧客の獲得、営業活動の効率化などにGISを活用することが出来ます。事業拡大のためのDMやポスティングなどのプロモーション活動の際に、年齢・世帯数・収入などのデータからターゲット顧客層の多いエリアを選定することによって営業活動のコストを削減することができます(図4)。
図4 (左)ポイントカード登録の顧客数を表したマップ(色が濃い=人数が多い)、(右)人口集積や通勤網から見た企業誘致の適地選定マップ 出典:国土交通省
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
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電話番号 | 03-6411-0858 |
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