東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

安保法採決無効の訴え続く 公聴会結果報告なし、委員長発言聞こえず

写真

 安全保障関連法は29日に施行されたが、野党側は安保法が「可決」された昨年の参院特別委員会の議事運営に問題があるとして追及を続けている。野党側の調査で、異例といえる与党側の議事運営がいくつも明らかになってきた。無効訴訟を検討している弁護士もいる。 (篠ケ瀬祐司)

 参院議院運営委員会の野党側理事の吉川沙織氏(民主=当時)は先月、事務局に対し、昨年九月十七日の特別委採決をめぐる議会運営や議事録の形式が、過去の例や議会運営の慣例に沿っているか調べるよう要求。事務局側は一部について回答した。

 それによると、特別委は採決前日に、横浜市内で地方公聴会を開催。鴻池祥肇(こうのいけよしただ)委員長(自民)は、公聴会の意見を「審査の参考にしたい」と述べた。「参議院委員会先例」には、地方公聴会の結果は委員会に「報告する」とある。特別委は公聴会の結果報告をしないまま採決した。参院初のケースだ。

 特別委では、鴻池氏の不信任動議が否決された後、審議中断を意味する「速記中止」が宣言された。その後、着席した鴻池氏を自民党議員らが取り囲み、野党議員も駆け付けて混乱。自民党理事の合図で与党議員らが起立を繰り返し、鴻池氏は与党の賛成多数で法律は可決したと表明した。

 採決約一カ月後に公開された議事録は、鴻池氏の発言は「……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)」とした。つまり、採決を求めた鴻池氏の発言は速記者や野党議員には聞き取れなかったが、鴻池氏の事務局に対する指示で、「本文」ではなく「追加掲載」部分に「速記開始」や「可決」したと、採決を有効とするための議事運営に必要な要素が書き加えられたといえる。これも初ケースだ。

 地方公聴会で意見を述べた弁護士の水上貴央氏は「野党議員は、何が採決されたのかさえ分からない状態だった。これでは採決したとはいえない。議員の表決権を侵害している」と憲法違反の疑いを指摘。「特別委の採決は存在しているといえず、その後の参院本会議での可決も無効だ」として、安保法採決無効を求める訴訟を検討している。

 

この記事を印刷する

PR情報