九州新幹線長崎ルート(博多―長崎)を巡り、与党検討委員会や佐賀・長崎両県など6者は29日、在来線と乗り継ぐ「リレー方式」により2022年度に暫定開業することで合意した。同ルートは新幹線と在来線の両方を走ることができる車両を使う計画だが、国による車両開発が遅れる中で、計画通りの時期の開業を優先する。
福岡市内で協議し、与党と両県に九州旅客鉄道(JR九州)、国土交通省、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を加えた6者で合意した。費用負担の問題などからリレー方式に慎重だった地元自治体が合意し、開業時期も決定したことで、長崎ルートは整備の節目を越えたことになる。
合意ではリレー方式により乗換駅の武雄温泉(佐賀県)などの追加工事費の地元負担を「実質ゼロ」とすることを盛り込んだ。両県が開業時にJR九州から約14億円で買い取る予定だった並行在来線の線路を、無償で譲り受けることで追加工事費と相殺する。JR九州の青柳俊彦社長は「開業による整備効果が早期に実現する」とコメントした。
佐賀県は国交省が25年春以降を見込む量産車両の運行まで、在来線特急の本数の確保も求めていた。そこで今回は22年度の暫定開業から3年間、JR九州が博多―肥前鹿島(佐賀県)の特急を1日に上下14本は運行することも明記した。
同ルートの当初計画では、博多―新鳥栖(佐賀県)で九州新幹線鹿児島ルートを走行。武雄温泉まで在来線を通り、長崎までは新設する新幹線の線路を走る。ただ車輪の幅を変えられるフリーゲージトレイン(FGT)は、同機構による開発が難航している。
国交省は博多から乗った在来線特急を武雄温泉で新幹線に乗り換えるリレー方式を提案。向かい側のホームでスムーズに乗り換えられるように駅舎を改修するなどで約70億円の追加工事費がかかるとした。一方で佐賀県が「FGT開発遅れによる新たな費用負担を求めないでほしい」と要望するなど、国と自治体の分担が焦点となっていた。
リレー方式で運行すれば博多―長崎間は1時間26分と、在来線特急より22分短縮される。FGTが直通すればさらに6分短くなる。
1973年の国の整備計画に盛り込まれた整備新幹線計画で未完成なのは九州新幹線長崎ルートのほか、北海道新幹線の新函館北斗から札幌までの間と、北陸新幹線の金沢―大阪間。
26日に開業した北海道新幹線は新函館北斗から札幌までの211キロが2030年度末の完成を目指して建設中。昨年3月開業の北陸新幹線は、金沢から敦賀(福井県)までが22年度末の完成に向けて着工済みだ。与党は東京五輪がある20年度までに福井駅までの完成を求める検討委員会を設置して議論を進めている。