田中克己「2020年のIT企業」

再編・淘汰を促すオブジェクト指向の到来

田中克己 2016年03月30日 07時30分

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 「2030年には、夢だったオブジェクト指向が実現されている」。野村総合研究所の室脇慶彦理事は、柔軟なプラットフォーム上にソフト部品を組み合わるシステム作り時代の到来を予想する。結果、開発とテストの作業が大幅に減り、ユーザーは攻めのIT投資に多くを振り向ける一方、IT産業に再編・淘汰の波が押し寄せる。勝ち抜けるIT企業はあるのか。

IT部門の弱体化が背景に

 日本のIT産業の特長は、IT技術者の7割がIT企業に所属していること。しかも、残り3割が所属するユーザー企業のIT部門は、人材採用が進まず、高齢化が進む。弱体化するIT部門に、既存システムの分かる人材は少ない。開発に携わったIT技術者の高齢化が加わり、要件定義を作成する人材もいなくなっていく。

 なので、多くの企業がIT企業にシステム化を任せる。IT技術者を含めたIT費用を変動費とする企業の一部は、丸投げもする。もちろん、ユーザーとIT企業の信頼関係があるからで、その最たる例は官公庁だろう。「要件定義は作れないし、当事者意識もない」。だが、そんなシステムを作れるのは、日本のIT企業しかいないのも事実。

 時に赤字案件化するが、多くのプロジェクトに関わり、経験を積めるIT企業のIT技術者は、成長のスピードも速い。受託したITシステムの内容を説明する力も持っている。そんなIT技術者に依存するITシステムが、攻めの経営を妨げ始める。IT費用の7~8割が保守・維持に割かれているからだ。

 こうした問題解決策の1つが、オブジェクト指向の活用にある。しかも、クラウドの普及がその活用を加速させる。独立したソフト部品を組み合わせて作るシステムは、各々の部品が機能強化されても周りに影響を与えない。密結合のシステムはソフトのバージョンアップのたびにテストに多大な時間をかけるのに対して、オブジェクト指向などによる疎結合のシステムのテストは限定される。事前の影響調査もいらないので、機能強化が容易に行える。作ったシステムは、部品の機能強化や交換にとって継続的に改善・改良していける。

 年に数回も機能強化をリリースするクラウドサービスはその先駆け。米GEが開発した航空機エンジンや医療機器などの稼働状況から故障を予知するサービスにもみられる。こうしたサービスやソフトの開発を強化するために、IT技術者を大量に採用する。自社だけで、開発するのに時間やコストかかり、人材も足りないなら、APIを公開し、エコシステムを作り上げる。

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