埼玉県朝霞市の女子中学生を、約2年もの間監禁した疑いで身柄を確保された、寺内樺風容疑者について、例のごとく一部のメディアは「容疑者がアニメ好きだった! オタクは犯罪予備軍!」的な報道をしている。具体的に言ってしまうと、日刊スポーツの以下の記事である。
その「女子高生アニメ」ってのは一体何なんだと思って本文を読んでみると「涼宮ハルヒの憂鬱」だった。
え?
誘拐・拉致監禁に関係あるか…?
しかも、主人公は男(略
さらに、同級生の言葉として
同級生は「アニメが大好きだった。パソコンなどの機械に強く、頭が良かった。昼休みは1人でパソコンをしていることが多かった」と話した。一方でプライベートはナゾに包まれていたようで、この同級生は「普通に会話はするけど、内面にまでは踏み込ませないような雰囲気があった」と証言した。
という証言も載せている。
これ、完全に「容疑者はオタクだった。コミュ症だった。やっぱオタクは犯罪予備軍だよね」といく印象を植え付けるための記事にしか見えない。
前にも書いたけど、いつも思うのは、槍玉に挙げられるのは、「挙げる方から見て、無くなっても困らないと思うもの」だな、という事だ。
例えば、こんにゃくゼリーを喉につまらせて子供が亡くなると、こんにゃくゼリーの会社は是正措置を求められる。本来そのまま食べさせるものを、凍らせて溶かさずに食べさせるという間違った食べ方だったとしても、だ。(ちなみに訴訟は原告側の敗訴。最高裁まで行ったのかな? 見つからなかった)
では、金属バットで殴り殺された人がいたらバットの販売が規制されるだろうか。子供がゴルフボールを飲み込んで喉につまらせたらゴルフボールの販売や所持に責任問題が浮上するだろうか。あるいは、酒に酔ったうえで殺人を犯したとして、酒が規制されるだろうか。
そんな事はない。どれも道具や酒のせいではなく、使ったり飲んだ人間の問題とされるからだ。
しかし、猟奇的な殺人を犯した犯人がゲームやアニメ・漫画を所持していると、それが大きくクローズアップされる。その事自体が問題であるかのように報道される。
日本の社会は、一度「宮崎勤事件」を経験している。あの事件は日本中に衝撃をもたらしたし、彼の供述が意味不明だったこともあり、彼の人格がいかにして形成されていったのか、どうしてあのような凄惨な事件を起こすことが出来たのか、それを解き明かすためにメディアが群がった。
そして出された一つの結論が、「宮崎勤は5000本以上のロリコン・ホラービデオを持つ異常者。そしてオタク」というモノだった。
※実際には宮崎勤の所持していたビデオは、殆どがアニメを含むテレビ番組を録画したものだった。
しかも、今回の問題に関して言うと、猟奇的でもなんでもない「涼宮ハルヒの憂鬱」である。正直いいってこじつけであると言わざるを得ない。
たしかに、「容疑者が若い男で、アニメファンだった」というのは非常にキャッチーでわかりやすい。だが、そういう安易な報道姿勢が逆にマスコミ不信を招く可能性がある事を、そろそろマスコミ自身が自覚すべきだろう。
今回の誘拐事件に至った経緯は、正直言って色々と精査するべき問題がたくさんあると思う。特に、誘拐された女子生徒のフルネームを知っていたという犯人の周到さは、ちょっと末恐ろしい物があるし、そのあたりはid:iGCNさんがエントリを書いているので、そっちを参照されたし。
女子生徒が無事だったことは何よりであるが、この監禁されている間にひどいことをされていないのを祈るばかりだ。
とにかく、こうしてまた、「オタク=犯罪者」が「作られた」
それだけは事実である。