2016年3月28日(月)

<朝霞少女誘拐>女子生徒の父親が会見「ようやくこの日来た」

 朝霞市の女子生徒(15)が約2年ぶりに保護されたことを受け、女子生徒の父親(46)が28日、市内で会見し「娘が保護され正直ほっとしている。妻も同じ気持ち」と第一声。「必ず戻って来ると信じていた。ようやくこの日が来た」と自分に言い聞かせるように、静かに喜びをかみしめた。

 再会を果たしたのは27日午後9時半すぎ、女子生徒は検査入院先で車いすに座っていた。父親は「私が歩いていくと娘が気付き、笑って手を振ってくれた。私も手を振って『お帰り』と言ったら、うなずいていた」。女子生徒も母親も涙の再会。父親は「私は大泣きはせず、こらえました」とうれしさを表現した。

 父親によると、女子生徒にけがはなく、体形もほとんど変化はなかったが「身長が5センチ伸び、話す言葉遣いが大人っぽくなった」。行方不明時に投函(とうかん)されていた手紙と、約1週間後に両親に届いた手紙は容疑者の指示で書き、千葉にいる時は玄関の外から施錠されて逃げられなかった。

 東京都中野区に引っ越してからはオートロックになり、父親は「逃げる機会はこれまでもあったかも知れないが、慎重な子。いろいろなことがあったと思う。私たちに会いたい一心で行動を起こしたのが昨日だった。よく頑張ってくれた」と胸の内を明かした。

 同時に親子は空白の2年の現実に直面している。「1年しか通っていない中学から卒業証書を受けていいのか。高校には入れるのか。かといって同級生のいない中学校に戻るのも」。今後、親子で話し合っていくつもりだ。

 最後に父親があいさつ。「娘は『お父さんとお母さんがチラシを配ってくれていたの知ってたよ』と言っていた。娘が逃げる勇気を持てたのも、報道のおかげ。本当に感謝している」

■中学校の校長、喜びと安ど「卒業証書渡せる」

 朝霞市の女子生徒(15)が約2年ぶりに無事保護されたことを受け、女子生徒の卒業式を15日に行った同市立中学校の校長(59)が28日会見し、「大事な卒業証書はまだ私の手元にある。手渡しをご両親と一緒に3月31日まで待っていてよかった。ギリギリの日まで信じていてよかった」と半月足らずでの急展開に、喜びと安ど感を交錯させた。

 女子生徒保護の一報を校長が耳にしたのは27日昼過ぎ。周囲から知らされ「ほんと? よかった」と思う気持ちはすぐに「とにかく本人であってほしい」との願いに変わった。本人と確認されると、日曜日の学校に集まった教諭らと喜びを分かち合った。3年間務めた女子生徒の担任教諭について、校長は「彼女を一番気に掛けていたので感慨深かったのだろう。言葉は少なかったが、涙ぐんでいた」と気遣った。

 「名前を呼んであげたいし、『はい』という返事を聞きたい」と卒業証書の手渡しを心待ちにする一方、校長は「まずは通常生活を取り戻すことが一番」と強調。学業も含めて1年時から止まった時間を取り戻すため、校長は「ストレスがなく、穏やかな気持ちで勉強できるよう母校としてサポートしたい。本人や両親が希望するなら、法的に難しいかもしれないが、見学や体験としての授業参加も検討したい」。4月の始業式では在校生たちに「一番近くにいる仲間。本人の気持ちを考え、通常の生活をさせてあげよう」と呼び掛けるつもりだ。

■「無事でよかった」会長も安心の声

 「朝霞市行方不明女子中学生を捜す会」会長として捜索活動に協力してきた星野秀一さん(43)は28日夜、朝霞市内で会見し「無事保護に至って非常に喜ばしく、安堵感に浸っている」と語った。

 捜す会は2014年6月に、女子中学生が通う中学校の保護者らで結成。SNSや朝霞市内でのビラ配りなどを通じて、情報提供を呼び掛けてきた。星野会長は2年近く続けた捜す会の活動を「女子生徒が見つからないと嘆いていた時もあったが、ご両親は気丈に振る舞って、絶対に見つかるんだという姿を見せてくれたのでサポートできた」と振り返った。

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