「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに国会でも論議になった待機児童問題で、厚生労働省が緊急対策を発表した。

 柱は、待機児童が多い地域での規制緩和だ。人員配置や面積の基準が国の最低基準よりも厳しい自治体に、国の基準並みにして受け入れを増やすよう要請する。小規模保育所での受け入れの上限を19人から22人に引き上げる、といった具合だ。

 だが、保育の現場からは国の基準がそもそも低すぎるとの声も聞かれる。自治体が独自に高い基準を設けるのも、安心・安全のために他ならない。子どもたちや現場の保育士にしわ寄せがいかないかが心配だ。

 どこまで基準を緩めるかは自治体に委ねられている。判断も責任も丸投げされた自治体側も困惑しているのではないか。

 問題解決の道筋を示したうえでの応急措置というならまだわからないでもない。だが、厚労省はこれまでも面積基準などを緩和してきた。本来は時限措置のはずが常態化している。同じことを繰り返すのか。

 必要なのは、安心して子どもを預けられる保育サービスを増やすことだ。まずは、保育のニーズを把握することだ。

 昨年4月に始まった子ども・子育て支援新制度では、待機児童にはカウントされない潜在的な保育ニーズも含めて整備計画を立てることになっているが、保育所整備の規模、スピードは実態から離れたままだ。今の整備計画が妥当なものなのか、再点検が必要だ。

 ニーズに即して受け皿を整備する際には、人材確保も考えなければならない。各地で保育士不足が深刻化し、施設を作っても保育士が確保できず受け入れを制限しているところもある。

 一方で、保育士の資格はあるのに働いていない潜在保育士は80万人弱とも言われる。背景にあるのは、低賃金や長時間労働などの待遇の問題だ。

 自民、公明、民主の3党で合意した社会保障と税の一体改革では、消費税を財源に、保育士の給与を引き上げたり、職員の配置を手厚くしたりすることになっていた。

 だが必要な財源には、消費税が10%になっても3千億円足りない。その10%も15年の実施予定が延期され、子育て支援の予算は大きな穴が開いたままだ。

 安倍政権に求められていることは財源を確保し、約束を果たす姿勢を明確にすることだ。

 これまでの延長線上で小手先の対応を繰り返しているだけでは、いつまでたっても深刻な事態は打開できない。