日米はじめ「同盟関係見直し論」に広がる波紋
「負担に対する見返りがない」
【ワシントン西田進一郎】米大統領選の共和党候補指名争いで首位を走る実業家ドナルド・トランプ氏(69)が外交・安全保障政策の方針を明らかにし始めた。日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)などとの同盟関係について、負担に対する見返りがないと見直す考えを強調している。しかし、世界の各地域への関与の要である同盟関係の見直しは、米国の外交政策の根幹にかかわるもので波紋が広がっている。
「非常に重要な2国間関係に関する米国の見解に何の変化もない」。米国務省のカービー報道官は28日の記者会見で強調した。トランプ氏が日本や韓国の駐留米軍を撤退させる可能性に言及したためで、トランプ氏の考えとの違いを繰り返し説明した。国務省報道官が、大統領選候補による個別の発言にコメントすることは珍しい。発言の影響を抑えるため、打ち消す必要があると判断したとみられる。
トランプ氏は21日にワシントン・ポスト紙、26日にはニューヨーク・タイムズ紙の取材に応じ、外交・安保政策を語った。トランプ氏は「米国はもはや裕福ではない」と指摘。財政上の観点から、同盟国などとの協力関係や負担のあり方を見直すべきだと繰り返し強調した。
トランプ氏は、太平洋地域の平和維持に貢献することが米国の利益になるという考えを否定。在日・在韓米軍の駐留経費について「なぜ(日韓の負担が)100%ではないのか」と疑問を示し、撤退をちらつかせて大幅な負担増を日韓両国に迫る考えを示唆した。
米政府は沖縄県・尖閣諸島が日本防衛の義務を定めた日米安保条約第5条の適用対象だと明言してきた。しかし、トランプ氏は、中国が尖閣諸島を占拠した場合に「何をするかは言いたくない」と回答を避けた。
トランプ氏はベルギー同時テロ後、一度は撤回していたテロ容疑者への拷問容認を再び主張している。
ケリー米国務長官は27日放送のCBSテレビとのインタビューで、トランプ氏の言動を念頭に「行く先々で会う指導者から、米国で何が起きているのかと聞かれる」と明かし、「米国にとって恥だ」と不快感を示した。
トランプ氏は外交・安保政策のアドバイザーも発表したが、元政府高官の名はない。カーネギー国際平和財団のレイチェル・クレインフェルド上級研究員は「無名で、2軍というより3軍。中国の専門家もいない」と厳しく指摘した。