大法院(日本の最高裁判所に相当)第3部(クォン・スンイル裁判長)は28日、脱北者のイ・ミンボクさん(59)が「北朝鮮に向けビラを飛ばすのを韓国政府がやめさせたことで、精神的苦痛を受けた」として、国を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、訴えを退ける判決を下した。
イさんは1991年に脱北し、韓国で宣教師として活動する傍ら、2005年から北朝鮮の指導者を批判する内容を書いたビラ数万枚を大型風船にくくり付け、北朝鮮に向け飛ばしてきた。09年からの5年間には5000個以上もの大型風船を北朝鮮に飛ばした。イさんがビラをまくたびに、北朝鮮は武力による報復をちらつかせ、脅迫してきた。
韓国政府は2007年から「北朝鮮が挑発をちらつかせ脅迫することにより、軍事境界線近くの住民たちが不安がっている」として、イさんによるビラまきをやめさせた。2014年10月には、北朝鮮関連の民間団体が京畿道漣川郡から北朝鮮に向けビラをくくりつけた大型風船を飛ばしたところ、北朝鮮が対空機関銃で粉砕し、南北間の銃撃戦に発展した。その後、韓国政府が北朝鮮に向けたビラまきを厳しく規制したため、イさんは訴訟を起こしていた。