世界の平和と繁栄、貧困問題の解決、持続可能な発展など、非常に次元の高い問題に取り組まねばならないのが国連事務総長という立場だ。しかしこのように現実における政治の世界において、潘事務総長に関する話題が絶え間なく語られる状況はやはり正常とはいえない。しかしこれを政治のせいだけにはできない。まず国民がそもそも潘事務総長の本業にあまり関心がない。先日、潘事務総長が「アフリカのサハラ砂漠西部をモロッコが占領した」という趣旨の発言をすると、モロッコでは100万人規模の抗議行動が起こるなど、時に潘事務総長も抵抗に遭うことはあるが、故国からの援護はほとんどない。潘事務総長は先日パリで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)でいわゆる「パリ協定」の締結を導いたが、これを実現させるため数年にわたり多大な努力を傾けてきたことが話題になるときには「国連事務総長としてではなく、大統領になるための実績作りだ」といった中傷も必ず付いてまわった。
もちろんこのようになった責任は潘事務総長本人にもある。その代表的な事例は昨年末、日本軍慰安婦問題解決に向け韓国と日本の両政府が合意に至った際、潘事務総長は「歴史に長く残る決断」などと評したが、これは現役の国連事務総長として口にすべき言葉ではなかった。
国連事務総長を出した国として、韓国が手にした有形・無形の資産は想像以上に大きい。これはニューヨークの国連本部を出入りするたびに感じることだ。ただし今後は「国連の支援でなんとか命脈を維持してきた最貧国」から、「国連事務総長を出す国」にまで成長したという象徴的な意味合いに満足せず、「韓国から『偉大な国連事務総長』を出した」という歴史に長く語り継がれる記録を残さねばならない。潘事務総長の任期はあと9カ月しかない。