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スポーツで膝の靭帯が切れたらどうする?前十字靭帯損傷の手術方法について解説


スポーツで膝の靭帯が切れたらどうする?前十字靭帯損傷の手術方法について解説の写真

写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 (C) Monika Wisniewska - Fotolia.com


前十字靭帯損傷とは、膝にある靭帯がスポーツなどで損傷するけがのことです。膝関節の安定性が損なわれるため、その後の競技復帰を悩ませるけがでもあります。今回は、前十字靭帯損傷の治療方法について、説明します。


前十字靭帯損傷とは?どんな症状が出るの?

前十字靭帯損傷とは、膝の前十字靭帯という靭帯が傷ついたり切れたりするけがのことです。膝は、太ももの骨とすねの骨、それから膝のお皿の骨で構成されています。太ももの骨とすねの骨は、いくつかの靭帯や筋肉によってつながっています。その中で、太ももの骨の後方外側から、すねの骨の前方内側に斜めに走っている靭帯を、前十字靭帯と言います。ズボンのポケットに手を入れた時の手の向きに走行していると考えるとイメージしやすいかもしれません。後十字靭帯という靭帯もあり、これは前十字靭帯と交差するように走行し、太ももの前方内側からすねの骨の後方外側についています。前十字靭帯はすねの骨が、太ももの骨に対して前に滑り出さないように固定する役割を持っています。後十字靭帯はすねの骨が後ろに滑り出さないように防いでくれています。そのため、前十字靭帯は膝を伸ばしたときに、靭帯が緊張しストレスがかかりますが、後十字靭帯は膝を曲げたときに、靭帯が緊張します。前十字靭帯損傷は、スポーツや重労働など激しい動きに伴って膝に過度にストレスがかかった場合や、スポーツで相手と接触し、膝に大きなストレスがかかった場合に起こりやすいとされています。また、性別によっても発生率が変わり、男性よりも女性がなりやすいとされています。

前十字靭帯損傷の主な症状は、膝の痛みです。ジャンプをして着地したときや、走っている最中に急激にストップした際に、膝に力が入らなくなり、痛みが生じる場合が多いです。患者さんによっては、膝から「ボキッ」と音がしたと話す方もいます。膝に力が入らなくなるため、歩くことが難しくなります。膝の曲げ伸ばしも制限され、しゃがんだりすることも難しくなります。時間がたってくると膝が熱を持ち大きく腫れることもあります。

 

◆前十字靭帯を損傷した後の治療方法とは?

前十字靭帯損傷を放置した場合、膝の半月板呼ばれるクッションの損傷や、関節軟骨が損傷するといわれています。上記のような症状が現れた場合には、早めに受診をし、医師の診断の下、適切な治療をすることが大切です。前十字靭帯を損傷した場合、治療方法は大きくわけると、保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法は、手術をせず、関節を固定したり、膝周りの筋力をつけるなどのリハビリを行う方法です。前十字靭帯損傷後の保存療法は、主に以下のものが挙げられます。

  • 関節可動域練習
  • 筋力増強練習
  • 装具療法
  • 物理療法(超音波療法や低周波治療など)
  • 姿勢、動作練習

関節可動域練習では、前十字靭帯損傷によって曲げ伸ばししにくくなった膝を、理学療法士などの専門家が動かしながら、動く範囲を広げていく方法です。筋力増強練習では、膝周りをはじめとした足の筋肉を鍛え、膝の関節が安定するようにします。装具療法は、膝の安定性を高めることができ、装具を使うことで早期から運動を行うことができます。物理療法では、損傷した靭帯の修復を促進したり、痛みを和らげる目的で使われます。また、受傷した際の姿勢や動作を確認、修正し、膝に負担の少ない動作を行えるようにしていきます。このような方法がとられる保存療法ですが、一度損傷した靭帯が完全に元に戻ることは難しく、治療の効果が表れにくい場合もあります。保存療法の治療成績に関する報告はいくつかありますが、日本整形外科学会が監修している、「前十字靭帯損傷診療ガイドライン2012」には、

成長期から思春期の前十字靭帯損傷保存的治療の成績は不良とする報告が多い

と記載されています。前十字靭帯損傷は再び損傷しやすいけがでもありますので、特に、スポーツ復帰を目指す思春期の学生などは、保存療法が適応とならない場合もあります。過去の研究では、保存療法を行った場合の成績をこのように述べています(木村雅史,実践すぐに役立つ膝靭帯損傷診断・治療マニュアル,2006)、(日本理学療法士協会,膝前十字靱帯損傷 理学療法診療ガイドライン)。

新鮮 ACL 損傷 56 例に対して関節鏡施行後 2~4 週間のブレースまたはギプス固定を行 い,その後慎重な筋力トレーニングを励行させた。結果,functional score は概ね良好 であり,スポーツ活動はほとんどの症例で可能となったが,大半はレクレーショナル スポーツレベルだった。前後動揺に関しては,7 割以上の症例で満足のいく結果は得ら れなかった。

この報告では、保存療法によって膝の機能は良好なレベルまで改善し、スポーツ活動も行えるようになるものの、レクリエーション程度の運動までで、本格的な競技復帰は難しいという結果となりました。また、膝の動揺に関しても、不安が残る結果となっています。日本整形外科学会が監修している、「前十字靭帯損傷診療ガイドライン2012」でも、同様に、

保存治療によりジョギングのような軽度なスポーツ活動への復帰は多くの場合は可能である。一方、バスケットボール、サッカーのようなジャンプ、カットの多いスポーツ活動(Pivoting sports)への復帰は保存的治療では困難である。

と記載されています。このように、本格的なスポーツ復帰を目指す場合や、膝の不安定性が大きい場合には、手術療法を検討します。

では、前十字靭帯損傷の手術方法は、どのようなものがあるのでしょうか。次に解説します。

 

前十字靭帯損傷の手術方法とは?

前十字靭帯損傷の手術は、損傷した靭帯に、新しい靭帯を移植して再建する方法をとります。昔は、人工の靭帯などを移植していましたが、現在は、自分の足の腱を用いて再建する方法が多いです。移植する腱は、以下のようなものがあります。

  • 膝蓋腱(BTB法)
  • 半腱様筋腱、薄筋腱(STG法)

膝蓋腱とは、膝のお皿についている腱のことです。この腱は比較的強靭であるため、治療成績が良いという報告もありますが、まだはっきりとはわかっていません。ハ半腱様筋腱、薄筋腱は、太ももの裏側にある腱です。膝蓋腱を使った方法と、半腱様筋腱、薄筋腱を使った方法の術後成績を比較した見解については、以下のような意見があります(日本整形外科学会,前十字靭帯損傷診療ガイドライン2012)。

BTB法の方が術後安定性の獲得に優れ、STG法の方が前膝部痛の合併頻度が低い傾向にあるものの、両者のoutcome差異に関しては対立する見解が多い。

この診療ガイドラインでは、膝蓋腱を用いた手術の方が、膝が安定する傾向にあり、半腱様筋腱、薄筋腱を使った手術では、術後の膝の前側の痛みが少ない傾向にあると記載されています。膝蓋腱は、膝のお皿についている腱であるため、自己の膝蓋腱を採取した場合は、膝の前側の痛みが術後合併症として現れる場合があります。しかしながら、まだ一定した見解は得られていないようです。その他にも、大腿四頭筋腱(太ももの前側の筋肉の腱)を用いる方法や、人工の腱を用いる方法などがあります。

また、手術の方法として、

  • 関節鏡下前十字靭帯再建術(鏡視下法)
  • 関節切開による前十字靭帯再建術(関節切開法)

の主に2つの方法があります。鏡視下法とは、内視鏡で手術を行う方法で、手術に伴う傷が少なく済みます。そのため、手術時間や入院時間を短縮でき、痛みも少なく手術を行うことが可能です。関節切開法は、靭帯の損傷が激しかったり、他のけがを合併している場合に選択されます。手術時間、入院期間の短縮だけでなく、スカートをはく場合などの見た目の面も考えると、まずは鏡視下法を選択するとされています。

 

前十字靭帯損傷は、スポーツで起こりやすく、「再受傷しやすいけが」でもあります。年齢や普段の活動量、競技復帰を目指すのかといった自身の状況と、治療方法のメリット・デメリットを知ったうえで、医師とよく相談し、治療方法を決めましょう。



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*この記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。




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