2月中にも正式契約すると思われていた台湾・鴻海による“シャープ買収”は、いまだに決着を見ない。

 22日は、鴻海が出資額について、2000億円の減額を要求したと報じられた。シャープは1000億円程度の減額で調整しているもようだ。

「鴻海は4890億円の出資予定だったので、2000億円のディスカントはほぼ4割引きです。いくら何でも値切り過ぎでしょう」(市場関係者)

 鴻海は総額7000億円を投じる再建案で、ライバルの官民ファンド・産業革新機構を蹴落とした。ところが、偶発債務(将来発生しかねない債務)問題が急浮上し、鴻海の郭台銘会長は正式契約を先延ばしした。

「偶発債務は最大で3500億円といわれましたが、精査した結果は数百億円規模といいます。売上高15兆円を誇る鴻海にとっては大した金額ではないでしょう。それなのに郭会長はのらりくらりで、次々と新たな要求を突き付けてくる。値切るだけ値切ってやるという意図が透けて見えます」(証券アナリスト)

 郭会長は、シャープのメーンバンクである、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に対し、新たな融資枠3000億円の設定を求めた。さらに、今月末に償還期限を迎える5100億円の借り換え融資についても、金利引き下げを要求しているという。

「シャープ経営陣やメーンバンクは鴻海の術中にはまったのでしょう。シャープ再建を表明していた機構は完全に手を引いたし、いまさら手を挙げる有力企業も見当たりません。鴻海が買収中止を宣言したら、再びシャープは経営危機に直面します。郭会長は、それを十分に分かったうえで、買収交渉を有利に進めようとしているのです」(経済ジャーナリストの真保紀一郎氏)

■メーンバンク2行にミゾ

 シャープ側が一枚岩だったら、郭会長はもう少し遠慮したかもしれない。

「メーンバンクのみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の関係が冷え込んでいます。というのは、鴻海の再建案を支持したのはみずほで、三菱東京は機構案を推していたからです。三菱東京側は『ほら見たことか』とみずほを冷たい目で見ているといいます。こんなことでは、郭会長に付け入る隙を与えるばかりです」(金融関係者)

 シャープは今月中の正式契約を目指すとしているが、郭会長にその気があるかどうか……。