米ジョージア州知事は、同性愛を拒むものと見なされ論争を呼んでいた信教の自由に関する法案に拒否権を行使した。これはハリウッド映画各社を含む米企業から圧力を受けていたものだ。
「ジョージアの信仰に基づく地域社会を守るために誰かを差別する必要はないと思う」と、ネーサン・ディール州知事は記者会見で述べた。
その上で、拒否権行使の決断は「単に信仰に基づく地域社会を守るためでも、ジョージアの雇用拡大につながる企業寄りの風土を供するためでもない。これは私たちの州の性格、この州の人々の性格に関わることであると私は信じている。ジョージアは歓迎の気風を持つ州だ」と付け加えた。
■ディズニー、成立なら「拠点移す」
3月に州議会を通過した法案は、信仰を持つ組織が(同性カップルの結婚式などで)その信仰に反した人々にサービス提供や雇用を拒否することを認める内容だった。支持派は信教の自由に重要な保護をもたらすと主張したが、反対派は差別と同一視していた。
同性愛者の権利を擁護するロビー活動団体、ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)はディール氏の拒否権行使を「勝利」と歓迎した。
「ネーサン・ディール知事に対するメッセージははっきりしていた。この嘆かわしい法案は、州の有権者のためにも、企業のためにも、ジョージアの将来のためにもならないものだった」と、HRCのチャド・グリフィン代表は言う。
コカ・コーラ、アップル、デルタ航空、ユニリーバ、セールスフォースを含む米企業が法案を強く非難していた。米プロフットボールリーグNFLは、法案が成立すれば、ジョージア州アトランタでのスーパーボウル開催の可能性に悪影響が及ぶことになると警告していた。
ウォルト・ディズニーやワインスタイン・カンパニーを含むメディアグループは、法案が成立すれば、ジョージア州にある製作拠点を州外に移すことを検討すると表明していた。
ターナー部門がアトランタを本拠とするタイム・ワーナー、21世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズ、バイアコム、コムキャスト、CBS、MGM、AMC、ディスカバリー、ライオンズゲート、スターズもディール氏に拒否権の行使を求めていた。
HRCは、脚本家のアーロン・ソーキン氏、映画監督のロブ・ライナー氏、俳優のジュリアン・ムーア氏などエンターテインメント界の著名人の連名による書簡をディール氏に送っていた。