東海 NEWS WEB
東海 NEWS WEBへ
NHKサイトを離れます
WEBニュース特集
体調急変事故を防げ

(2016年3月24日放送)

2月に大阪の繁華街の梅田で車が暴走した事故では、巻き込まれた歩行者2人が死亡しました。
車を運転していた51歳のドライバーは、事故の直前に心臓の病気になって意識を失った状態だったとみられています。
このように、ドライバーが突発的な発作を起こしたことが原因で事故になることは少なくありません。
愛知県内では、統計を取り始めてから去年までの2年間でこうした事故が131件起きました。
ことしに入ってからも2月に豊川市と一宮市、それに半田市で相次ぎました。
このうち、豊川市の事故を名古屋放送局・福島康児記者が取材しました。

不自然な姿

2月、豊川市の国道1号線で起きた交通事故は、現場の約500メートル手前で急発進した車が、信号待ちの車に衝突し、弾みで6台が次々とぶつかりました。
事故に巻き込まれた女性は、事故の直後に、追突してきた車の運転手の不自然な姿を目にしたといいます。

「背もたれに寄りかかって、気を失ってるという感じでした。血を流してるような感じではなかったです。力が抜けてぐだってなっているような感じでした」と振り返ります。

誰もに起こる危険性

警察によりますと、車を運転していた44歳の男性の死因は病気。
しかし持病はなく、運転中に突然、意識を失った可能性があるということです。
心臓の病気に詳しい医師は、運転中の心拍数の変化から誰もがこうした発作を起こす危険性をはらんでいると話します。

運転で上昇する心拍数

ある男性の1日の心拍数の変化を記録したグラフを見てみると、午前8時30分頃は1分間に69回と成人男性の平均的な値を示しています。
このあと、男性は通勤のため車を運転しました。
すると5分後には、1分間に111回と心拍数が急上昇しました。

愛知学院大学・歯学部付属病院の松原達昭医師は「特に問題なく運転していても、ある程度はストレスがかかって緊張状態にありますので、心拍数、脈の数もある程度は早くなります」と説明します。

さらに増す危険性

心拍数が上昇すれば、突発的に心臓の病気を引き起こす危険性が増すというデータもあります。
例えば心拍数が高いと心筋梗塞が起きやすい傾向があることが分かっています。
こうしたことから、それまで全く自覚症状がない人でも、運転中は体調が急変して心筋梗塞などを発症しやすくなると松原医師は指摘します。

「運転をしているときは、当然集中しなければいけない。ストレスもかかる。そういったことで血圧や心拍数が上がってきますので、どうしても心筋梗塞などが起きやすくなることは間違いありません」

最新技術で支援

突然の体調の変化が原因の事故を防ぐことはできないか。
最新の技術を使って、ドライバーを支援する試みも進んでいます。
愛知県刈谷市の自動車部品メーカー「アイシン精機」が開発したシステムは、ドライバーの顔を映すドライバーモニターカメラを搭載しています。

そしてドライバーが倒れ込んだり、目を閉じていたりすると、車がドライバーに音声で問いかけます。
これに反応が無ければ、運転者は車を正しく運転する状態に無いんだと車が判断して、ブレーキをかけながら、路肩に安全に停止させます。

開発を担当した田中優さんは「車の回りに歩行者がいるのか、あるいは後続車はどれくらい接近しているのか、安全に退避するスペースはあるか、今ブレーキをかけても大丈夫かという判断する部分が今後の技術開発の課題になっています」と説明します。

実用化に向けて

このシステムは技術面の課題に加え、万一、事故が起きた際の法律的な問題など課題がある一方、発作による事故を防ぐのに大きな効果があると考えられ、将来的な実用化に向け開発が進められています。

重大な事故を防ぐために

ふだんは健康であっても、急に体調が変化したり、病気が起きたりするのは誰にでもありえることです。
そうした事態になっても重大な事故を防ぐための新たな技術に期待することも大切ですが、まず、ドライバーにできることは、運転中にわずかでも自覚症状を感じたらすぐに運転をやめること、そして、医師に相談して自分の体調をしっかり把握することだといえます。

WEBニュース特集
このページの先頭へ