東日本大震災の被災地・宮城県女川町で11年4月21日に開局した臨時災害放送局「女川さいがいFM」が29日、最後の放送を終え、電波の停波と、インターネットで配信されるサイマルラジオを停止し、閉局した。この日は須田善明町長(43)が生出演し、閉局を迎えるにあたっての思いを語った。そして最後の曲として、28日にサプライズでミニライブを開いた桑田佳祐(60)率いるサザンオールスターズの代表曲で、震災後、流すこと自体が自粛ムードにあった「TSUNAMI」を流した。
須田町長は、スタッフとリスナーへの感謝の思いを語り続けた。
「本当に…いよいよ終了ということになりました。スタッフ、関わったそれぞれの皆さんに心から感謝申し上げます。歴代、関わるメンバーの変遷もあったんですけど、全部つながっていますよね。関わっているそれぞれが、つながって広がっていき…5年間の間にいろいろな人に届いた。正直、臨時災害放送局は応急、緊急のもの。被免許者は自治体(女川町)になります。(開局初年度の)11年時点での閉局が、行政の判断としてはなかったわけではない事実があったわけです。でも果たす役割、意義は…住んでいる我々、被災した方、女川に関心があり支えてくださった皆さんには大変、重要な存在。町も(免許)延長の交渉をさせていただき、ご了解いただいた国のご理解もあった。運用には我々も意見があったが(国は)斟酌(しんしゃく)して免許を出してくださった。資金も寄付など、いろいろな形で成り立ってきた。被免許者として(スタッフ)の皆さんに任せっぱなしで(スタッフが)エンジンとなってくださった」
女川さいがいFMは今後、「onagawafm」(オナガワエフエム)プロジェクトとして新たなスタートを切る。4月3日からは、仙台市の東北放送(TBC)の1番組「佐藤敏郎のonagawa now! ~大人のたまり場~」(日曜午後11時)として放送される形で継続する。同番組は被災地と呼ばれた町の「いま」を伝え、少しずつ元気を取り戻している人々の「声」を伝える30分のトーク&音楽番組。NPO法人キッズ・ナウ・ジャパン事務局長で、女川さいがいFMをはじめ全国のコミュニティーFMなどで放送された「佐藤敏郎の大人のたまり場~牡鹿半島フォークジャンボリー~」に出演の佐藤敏郎氏と、女川さいがいFMで、生放送含め1日3度、放送された人気番組「女川地域情報ラジオおながわ☆なう」パーソナリティーを務めた阿部真知子が出演。番組はradiko.jpでパソコン、スマートフォンでも聴取可能で、有料のradikoなら全国で聴取可能。
須田町長は、今後についても言及した。
「これから、新しい形で魂、イズムがスタートする。一歩はTBCさんのAMラジオ。展開は(番組を継続するスタッフに)アイデアを出してもらって、皆さんにお願いする場面も出てくる。新しいスタートを切るということで、ご理解いただきたい。多くの皆様に温かいメッセージを送っていただき、遊びに来てほしい。町としては支えていただいた、それぞれのお立場の皆さんに感謝の思いしかありません。ここで気付いた、気付かされた、積み上げたものを、これからにつなげたい。今後、同様なことが起きた場合、どうあるべきか、新しい枠組みもあったら、いいということもございました。私だけでなく、関わる皆さんと将来の温かい道を切り開いていきたい。女川だからできる道を我々は開きたい」
須田町長は、女川さいがいFMの番組「須田善明 THE VOICE」では、パーソナリティーも務めた。そのことについても振り返った。
「的確にちゃんとお届けできたのか、自分自身、客観視できていないところがございまして、どうだったのか…というところある。今のあり方、考えた方、現実がある中、今をどう捕らえていくか、自分なりに全力でお届けした。番組はなくなるが、(今後、自分の考えを)お伝えする機会があれば」
そして須田町長は最後の1曲として、「震災後、自粛を余儀なくされてきたが、待ち望んだ1曲。女川さいがいFM閉局のタイミングだからこそかけられる1曲」として、サザンオールスターズの「TSUNAMI」のタイトルをコールした。
「名曲がある。その曲に罪があるわけじゃない。歌い継がれ、語り継ぐことに意味があり、人々の心に届く。私からご紹介させていただきます。先日は、ご協力いただきありがとうございます。サザンオールスターズで『TSUNAMI』」
「TSUNAMI」が流れた後、MCとスタッフが「これを持ちまして、全ての放送を終了し、停波いたします。開局から今日まで5年間にわたって、女川町で放送を続けてきました。町民の皆さん、全国からインターネットで応援してくれた皆さん、ありがとうございます。お聴きのラジオは、女川さいがいFMでした。それでは皆さん、明日に向かって、がんばっぺ!!」とあいさつし拍手した後、時報が流れ、午後12時に放送は終了した。さらにインターネットで聴取する全国のリスナーに向け、同12時5分にスタッフが「現在、スタジオの周りには、たくさんのマスコミの方と関係者がいらっしゃいます。ありがとうございました」と言い、インターネットでの配信も完全に終了し、女川さいがいFMは5年の歴史に幕を下ろした。
今後、始動する「onagawafm」プロジェクトは、TBCの番組だけではない。開局初年度からMCを務めた慶大総合政策学部3年の阿部真奈さんが(21)MCを務め、「onagawafm」が制作する番組「しぶや★なう」が、4月に開局するコミュニティーFM「渋谷のラジオ」で2日にスタートし、毎週土曜日午後4時から放送される。阿部さんは「女川の経験を生かしながら、渋谷で頑張っていきたいと思います」と抱負を語った。またツイッターやフェイスブックでは毎日、女川の話題や魚市場情報などを発信。女川の現在を伝えるインターネット放送の展開も検討中で、将来的には通販にもつなげていく方向だ。
MCの木村太悦はJリーグ昇格を目指して、今季は東北社会人1部リーグで戦うサッカーチーム「コバルトーレ女川」のスタジアムDJを継続する。開幕戦は4月10日午後2時から、女川町総合運動公園で猿田興業(秋田)と対戦する。木村は「地元女川に根ざしたサッカーチーム。東北社会人1部で全力で戦っていきます。チーム一丸となって、Jと名の付く舞台に立てるようチーム全力で立ち向かっていくつもりです。10日の開幕戦は町民、町外の皆さん、1000人の動員を目指しています。多目的人工芝グラウンドでお会いしましょう」と呼び掛けた。