29日施行 集団的自衛権行使が可能に
昨年9月に成立した安全保障関連法は29日午前0時に施行される。憲法が禁じる武力行使に当たるとしてこれまで認めていなかった集団的自衛権の行使が可能になるほか、他国軍への後方支援や国際協力活動での自衛隊の任務が拡大する。戦後日本の安全保障政策は大きく変わるが、関連法への国民の理解は深まっておらず、政府は当面、慎重な運用を図る方針だ。
防衛省は28日、施行を前に「安全保障法制整備検討委員会」を開き、中谷元(げん)防衛相が「戦争を未然に防ぎ、国民の命と平和な暮らしを守るために必要不可欠な法律だ。引き続き慎重を期して準備作業、教育訓練を進めてほしい」と同省幹部に指示した。
菅義偉官房長官は同日の記者会見で「国民の広範な支持を得ることが極めて大事だ。一層理解してもらえるよう説明していきたい」と述べた。
安保関連法は、既存の10法をまとめて改正した「平和安全法制整備法」と、新法の「国際平和支援法」で構成される。施行後は、日本と密接に関係する他国への攻撃によって日本の存立が脅かされる「存立危機事態」では、集団的自衛権として必要最小限度の武力を行使できるようになる。
米軍など他国軍への後方支援は地理的制約がなくなり、弾薬の提供や発進準備中の戦闘機への給油など支援内容が広がった。
今後は平時でも、共同訓練など「日本の防衛に資する活動」に従事する他国軍を自衛隊が防護できる。国連平和維持活動(PKO)では、離れた場所にいる他国軍部隊などを救出する「駆け付け警護」が新たな任務に加わった。
憲法学者や野党は、集団的自衛権の行使容認や後方支援の拡大は憲法9条に違反すると批判してきた。自衛隊の任務が広がれば、隊員のリスクもそれだけ増える。民進党や共産党などは安保関連法廃止を目指して夏の参院選での協力を進めており、施行後も与野党のせめぎ合いが続くことになる。【村尾哲】