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【政治】

安保法施行 根拠示さず武力行使も 政権中枢に権限・機密集中

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 外交方針に「積極的平和主義」を掲げ、日本の安全保障体制を強化してきた安倍晋三首相。安全保障関連法は最終段階といえるが、第二次政権の発足後、次々と手がけた法律や政策は密接に連動している。経過をたどると、異論に耳を貸さない政権の体質も浮かび上がる。 (関口克己)

 安倍政権は二〇一三年十二月、国家安全保障会議(日本版NSC)を発足させ、特定秘密保護法を成立させた。NSCは首相や官房長官ら少数の閣僚だけで重要な外交・安保政策を決められる組織。決定過程や米国からの情報を「特定秘密」に指定すれば、国民に知らせずに封印でき、公務員らが漏らせば最高懲役十年の厳罰が科される。

 政権の中枢に権限と機密情報を集中させた仕組みは、昨年九月に成立した安保法と密接不可分の関係にある。安保法は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認が柱。仮にNSCが集団的自衛権の行使を決定した場合、妥当性を判断できる根拠や事実関係という重要な情報が国民に示されないまま、自衛隊が海外で武力行使に踏み切ることにもなりかねない。

 一方、政権は一四年四月、武器輸出三原則を変更し、武器の輸出や他国との共同開発を事実上解禁した。日本製の武器や部品が紛争を助長する懸念が生まれただけでなく、米国や英国、フランスと武器の共同開発を通じ、軍事的な連携を強められるという点で安保法を補完している。

 首相は秘密保護法や安保法について「国民に理解していただけるよう丁寧に説明する」と繰り返してきた。だが、安保体制の強化と同時並行で、足元では報道への圧力や介入と受け取れる動きが相次いでいる。

 自民党の調査会は昨年四月、安保法案の閣議決定を前に、コメンテーターが官邸批判したテレビ朝日などの幹部から事情を聴取。国会で審議入りした後の六月、首相を支持する自民党若手議員らが安保法の反対論に対し「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」などと発言した。首相に近い高市早苗総務相は今年二月、電波法に基づく電波停止を放送局に命じる可能性に言及した。

 首相は一連の法制化に区切りをつけたことを受け、在任中の改憲実現に意欲をみせ始めた。夏の参院選でも争点に位置付ける考えを示し「国会議員は正々堂々と議論し、逃げることなく答えを出していく」と慎重論をけん制している。

 

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