あれは確か俺が小3の時。
休日の午前中だったように記憶している。
俺は、近所に住む3つ上のみっちゃんとスーファミで楽しく遊んでいた。
事件は、そんな穏やかな時間に突然訪れた。
ここで、舞台となる我が家について少し説明しておきたいと思う。
実家1階の間取りはこんな感じ。
北側に台所、それと繋がるように居間がある。
俺はこの居間でみっちゃんとスーファミをしていた。
突然、ばーちゃんの声があがる。
「ほぉーーーう!!ほぉーーーう!!」
「はえぐこーぅ!!はえぐこーぅ!!」
注)早く来い の意。
方向は台所側にある裏口だ。
俺とみっちゃんは急いで台所と居間を仕切る戸を開けた。
両手、両脇に酒瓶を抱え、そして口に酒瓶を突っ込んだババアがいた。
衝撃の光景に、俺たちは固まった。
目が合う・・
刹那、ババアは脱兎のごとく裏口に向かって駆け出した。
立ち塞がるばあちゃんを押し退けそのまま裸足で裏口から逃走していった。
取り残されるばーちゃんと俺らの3人。
しばらく何も言葉が出なかった。
ババアと書いたが、犯人は明らかだった。
何故なら、そのババアは隣家のババアだから。
顔ばれ、しかも遺留品としてのサンダル。
証拠は十分だった。
その頃、実家の地区では酒泥棒が頻発していた。
犯人はあのババアだったんだ。
これだけ証拠があって、しかも現行犯を目撃したにも関わらず、オトナの協議でもあったのか、警察沙汰にはならなかった。
しばらくして、そのババアはお亡くなりになった。
重度のアルコール中毒で、肝臓がかなりやられていたらしい。
因果応報という感じもするが、なんとなく可哀想な気もする。
この前母ちゃんと電話したときに、久々に話を聞いて思い出した。
遠い日のエピソードである。