藤田孝典(NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学人間福祉学部客員准教授)
大分県は別府市・中津市がパチンコなどのギャンブル行為をおこなう生活保護受給世帯への生活保護の停止・減額措置に対して、是正要請をおこなった。生活保護受給世帯がギャンブルをおこなうことを理由に、生活保護の停止・減額をしてはならないと要請したのである。これらの是正要請を受けて、両市は新年度から処分を行わない方針を決めた。両市の福祉事務所のケースワーカーが管内のパチンコ店などを見回り、生活保護受給者が店内にいた場合は、指導や生活保護上の処分をおこなってきたが、これらは今後おこなわれなくなる。一連のギャンブル行為をおこなう生活保護受給世帯への福祉事務所の関わりが物議を呼んでいる。
今回の騒動を整理したい。まず生活保護受給者はギャンブル行為をおこなってはいけないのか。生活保護法には第60条に「被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。」と規定されている。ギャンブル行為はこの節約を図り、その他の生活の維持及び向上に努めていないものといえるかもしれない。
一方で、同法27条2項には「指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。」とされており、なおかつ同法27条3項には「被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。」という規定もある。生活保護受給者には当然自由があり、それを尊重しなければならないし、指導や指示は意に反して強制してはならない。
ではギャンブルをする自由は認められるのだろうか。これもまた生活保護法にはギャンブルを禁止する明確な規定はないのである。要するに、生活保護受給者だからこれをしてはいけないという具体的な禁止行為はない。市民と同じく、公共の福祉に反しない限り、何をするのも自由である。決して生活保護受給者は市民より劣り、生活上の制限があるような二級市民ではない。結論からいえば、ギャンブルをするのも自由であろう。当然、どのような生活をしても構わない。