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【社説】

「民進党」結党 具体策掲げ政権に迫れ

 民主党と維新の党が合流して「民進党」が船出した。総裁として自民党を率いる安倍晋三首相が一強支配を強める中、政権を託し得る政党として、再び民意の受け皿となれるのか。正念場である。

 夏の参院選や、同日選の可能性も指摘される衆院選を控え、急造の感は否めないが、それだけ政治状況は逼迫(ひっぱく)しているのだろう。衆参合わせて百五十人を超える規模での始動だ。「安倍一強」を許してきた野党が、多弱からの脱却を目指して結集することを、まずは歓迎したい。

 新代表に民主党の岡田克也代表、代表代行に同党の長妻昭、蓮舫両代表代行がそのまま就き、新たに江田憲司維新の党前代表も代表代行に就任した。

 合流時の勢力からいっても、民主党による事実上の吸収合併であり、民主党色が色濃く残る。選挙に向けて政党名を変えただけだと有権者に否定的に受け止められれば、幅広い支持は得られまい。

 まずは、あるべき社会の姿や、政治・経済、外交・安全保障の在り方などを明確に掲げ、それを政策として具体化し、どうやって実現するかの道筋をも、説得力ある形で国民に示してほしい。

 政権交代を果たした民主党の二〇〇九年衆院選マニフェスト(政権公約)は、目指す方向性はおおむね評価できたが、実行力に乏しく、政権担当能力を疑われて有権者の信頼を失った。その反省を踏まえなければ、政党として生まれ変わったとは言えまい。

 党人事で唯一注目すべきは、政調会長への山尾志桜里衆院議員の起用である。待機児童問題などをめぐり、首相らを厳しく追及した姿勢が評価されたのだろう。当選二回の若手議員起用で、党イメージ刷新の狙いもあるに違いない。

 政策づくりは党内の意見集約はもちろん、党外との折衝など調整力が問われる仕事だ。特に、原発や安全保障をめぐり、党内には多様な意見が存在する。重要政策に曖昧さを残すようでは、政権交代可能な勢力と呼ぶには程遠い。

 安保や経済など安倍政権には転換を要する政策が多々あるが、問題点の指摘や批判にとどまらず、どう転換するかの具体策の提示にも力を注いでほしい。

 岡田代表は「政権交代可能な政治を実現するラストチャンス」と強調した。民進党が民意の受け皿とならなければ、安倍政権によって蝕(むしば)まれた立憲主義や民主主義を立て直す機会をも逸する。覚悟を持って政権と対峙(たいじ)すべきである。

 

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