新たな旗のもとに集った議員の熱気と、国民の冷めた空気。まずは、この差を埋める努力から始めるしかない。

 民主党と維新の党などの議員が合流し、新しい民進党としてきのう党大会を開いた。

 待機児童問題で安倍政権を追及する若手の山尾志桜里氏を政調会長に起用したが、岡田代表らほとんどの役員が民主党からの横滑り。党名以外にどこが変わったのかとの批判もある。

 冷ややかな視線を浴びるのも無理はない。

 自民党の長期政権に代わる新たな政治への期待を背負って09年に発足した民主党政権は、国民の思いを裏切り続けた。

 実現できないマニフェスト、空回りした政治主導、そして消費増税をめぐる党の分裂。その時に出ていった議員の一部とよりを戻しただけだ、との印象はぬぐいようがない。

 政権を失った民主党が立ちすくむうちに、安倍政権は、民主党の野田内閣による12年の衆院解散から3度続けて国政選挙に勝ち、「1強」の政治体制を築いてきた。

 安倍首相は「民主党政権時代より、企業倒産件数は約3割減った」などと、政権交代で経済は上向いたと強調する。半面、格差の拡大や待機児童問題などへの国民の不満は根強い。

 首相はまた、集団的自衛権の行使容認や安全保障法制に見られるように、憲法の枠組みを越えかねない危うい道を進む。その先に見すえるのは「変えること」を目的とした憲法改正だ。

 安倍氏の政権運営に危うさは感じるが、ほかに選択肢が見あたらない――。こんなもどかしさを抱く有権者は多い。安倍政権のもとでの13年参院選と14年衆院選がいずれも52%台の低投票率だったことは、そのひとつの証左だろう。

 岡田代表は党大会で、民主党政権時代に期待に応えられなかったことを「深く反省する」と語った。そのうえに、新たな一歩を踏み出すべきときだ。

 衆参で156人の野党第1党となる民進党が、1強に対峙(たいじ)しうる存在になれるかどうか。それが、政治に緊張感を取り戻せるかどうかのカギを握る。

 民進党は「自由、共生、未来への責任」を結党の理念とし、教育、雇用、男女の三つの格差是正や立憲主義の堅持を打ち出すという。方向は妥当である。

 国民一人ひとりの思いをすくいあげ、具体的で説得力ある政策として政権にぶつけ続ける。

 政党にしかできないこの地道な作業を通じてしか、信頼を取り戻すことはできない。