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味の素「労働時間短縮」に隠れた本当の意味

東洋経済オンライン 3月28日(月)6時0分配信

 味の素には本社機能もあれば工場もあれば研究所もある。同じ本社内であっても、営業部門と経理部門では働き方は大きく異なる。そこで、味の素では、「その部署の最も効率の良い働き方を考えることができるのは、その部署自身に他ならない」と考え、人事部がトップダウン的に施策を落とし込むのではなく、その部署の責任者に労働時間短縮の取り組みを考えてもらうということを重視している。

 その際、人事部は各部署の相談相手となり、例えば、海外と関わる仕事をしている部署であれば、時差があるのでフレックスタイム制を最大限に活用することを推奨したり、21時から1時間のテレビ会議を行うならば、その1時間のために遅い時間まで会社に留まることは無意味なので、在宅勤務制度を利用してWEBカメラ付きのPCでテレビ会議に参加するほうが賢明であるという旨を提案したりしている。

■ ルールを守らせるのは人事部の役割ではない

 すなわち、味の素においては、決まったルールを守らせるのが人事部の役割ではなく、社内での困りごとをヒアリングしたり、労働関係の法令をチェックしたりしながら、社内で利用できる制度や仕組みを整備して、どの部門でどのような制度を利用するのがベストなのかということをアドバイスするのが人事部の役割だということである。

 第3のポイントは、ワークライフバランスやダイバーシティ(多様性)の尊重である。

 味の素の経営計画において、労働時間短縮に対する取り組みは、それ自体が最終目的ではなく、より上位の概念であるワークライフバランスやダイバーシティの実現のための手段の1つとして位置づけられており、一人ひとりに合った働き方を提供できる環境こそが会社としての競争力にもつながると同社は考えている。

 そのため、手段と目的が逆にならないよう留意しながら、労働時間短縮施策を推進しているということだ。例えば、味の素では会社で朝食の無料提供を行うなど、朝型勤務を推奨しているが、朝型を強制するような雰囲気は決して作っていないそうである。

 一般的に朝型勤務は効率が上がると言われているが、子供を保育園に送り届けてから出社したい子育て期の社員にとっては、むしろ勤務開始時刻の繰り下げにニーズがあるため、一律に朝型勤務をしなければならない雰囲気になると、子育て期の社員が働きにくい職場になってしまう。

 そのため、朝型勤務は選択肢の1つとした上で、コアタイムの無いスーパーフレックスタイム制を導入し、出退勤は原則として本人の裁量に委ね、状況によっては、在宅勤務を選ぶこともできる。

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最終更新:3月28日(月)11時30分

東洋経済オンライン

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