ひらめきの月曜日
2016年3月28日
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うどんを日々研究しているお店の方から、手打ち作業を助けるガジェット情報をたっぷりと教えてもらいました。
関西に住んでいる友人がうどん屋でバイトをしているのだが、話の中でそこの店主の事を「店長」ではなく、必ず「所長」と呼ぶのが気になった。
なんでもそのうどん屋は、「店」ではなく「研究所」を名乗っているそうだ。ならばとその研究成果を聞きに行ったところ、驚きのうどんガジェットが飛び出しまくった。うどん作りのお助けアイテム、独特の世界です。 能勢電鉄で「絹延橋うどん研究所」へやってきた自分のうどん屋を研究所と呼んでいる店は、兵庫県川西市にある「絹延橋うどん研究所」。埼玉の自宅からはなかなかの遠さだったが、本当に行ってよかったと先に断言しておく。
最寄りとなる能勢電鉄の絹延橋駅でスイカ(JR東日本のICカード )が使えなくて、筆談案内機という初めて使う機械で清算をした。ずいぶん遠くまで来たなと思った。 これで清算をするのだが、清算機ではありませんと書かれていて混乱した。
猪名川に掛かる絹延橋のすぐ近く、川を挟んで五月山を見上げる閑静な場所に、目指す研究所はあった。
確かに「絹延橋うどん研究所」と書かれたオシャレな建物。一見さんは入りにくいかもしれないが、たまたま通りがかるような場所でもないので、その味を知る地元客やリピーターの多い店なのだろう。 研究所を名乗っているが、誰でも入れるうどん屋さんです。
うどん屋さんっぽさがゼロの看板。
店内はうどん屋というよりはカフェっぽいかな。壁に貼られた小麦粉の袋がかっこいい。
ここの所長は固い業種の勤め人だったのだが、7年前に今の仕事よりもやりたいこと(うどん屋)が見つかったと52歳で退職し、2年の準備期間を経てこの研究所をオープンさせた遅咲きのうどん職人。いや職人というか研究者。取材日の前日、無事に5周年を迎えたところだとか。
その外見は、まるで脱サラしてうどん屋をはじめそうなタイプに見えるかもしれないが、それはまるっきり正解だ。 絹延橋うどん研究所の所長。あなたに会うためやってきました。
いきなりうどん屋を始めた経緯などは、うどんを作る機械の説明と一緒に語っていこうと思う。
以下、このレポートではうどん作りに使う機械のことをガジェットと呼ぶが、私がガジェットという言葉を最近になって覚えたから使いたいだけで、特に深い意味はない。 小麦粉と塩水を撹拌する専用ガジェットうどん作りで最初に登場するガジェットは、粉と水を混ぜるミキサー。練り機やピンニーダーとも呼ばれる製麺業界ではおなじみのガジェットである。誰もガジェットとは呼んでないが。
うどんやそばの職人が、大きな鉢を使って水と粉をかき混ぜているのを見たことがあると思うが、あの大変な作業を代行してくれる便利なツールのこと。 これは手打ち蕎麦職人による撹拌作業。この作業を代行してくれるのがミキサー。モデルは昨年蕎麦作りを習った「つけものと手打ちそばの伊澤」の伊澤さん。
もちろん所長も手作業でやればできるのだが、「機嫌ようやれるのは3キロまで!」ということで、店では一度に9キロ近い粉を混ぜられるミキサーを使用している。
このように所長は自分が機嫌よくうどんを作るために、重労働を代行してくれる便利なガジェットをどんどん導入するタイプの人。楽をして儲けたいのではなく、楽をして楽しいところをやりたいのだ。 小麦粉と塩水をかき混ぜるメーカー不明のミキサー。200ボルトのパワフルなやつ。
「全行程を手作業で行う人を否定する気は一切ないし、それはすごいことだと思いますが、私は50代になってから本格的に始めたうどん打ちを70代になっても楽しく続けたいと思っているからこそ、機械と仲良くするんです」
これが所長の考えである。実際は関西弁なのだが、うまく文字にできなかった。若くしてうどん職人となった人とは、その辺の感覚がちょっと違うのかもしれない。 どんの材料は、小麦粉、塩、水のみだが、シンプルなものほど奥が深い。
使用する小麦粉は、さぬきうどんに惚れこんだ上で、この場所で愛されるうどんを研究する所長らしく、地元である兵庫県の地粉「ふくほの香」と、香川県産の「さぬきの夢2009」をブレンドしたものをメインで使っている。 ただし最近はふくほの香が品薄なこともあり、「全国地粉の旅」と自分の中で銘打って、様々な小麦粉を配合中。研究所を名乗るだけあって、安定よりも進化を求めるタイプの店のようだ。 この日は愛知県産の「きぬあかり」を配合。同じ品種でも、産地や育て方、あるいは製粉業者によって微妙に味が違うのだとか。
まず粉だけで2〜3分撹拌することで、水の回りがよくなるそうです。
小さな穴の開いたフタを使い、撹拌しながら塩水をチョロチョロと入れていく。機械のように正確な回転で(機械だから)12分ほど回すと、モニュモニュとした小麦粉の塊ができあがった。
確かにこれを全部手作業でやっていたら、うどん作りが楽しくなくなるかもしれない。 小さな穴からチョロチョロと塩水が落ちていく合理的なフタ。
まだまだうどんからは程遠い状態の生地。これが多種多様なガジェットによって麺となるのだ。
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