松田公太氏は、乙武氏など構わずトランプ氏に学べ --- 筒井 冨美
松田公太氏が率いる政党「日本を元気にする会(元気会)」が崖っぷちである。はっきり言って知名度が低い。正直に言って「タリーズと猪木と筆談ホステスの…なんかよく分からない政党」といった印象で、世論調査では「その他の政党」扱いされたり、NHKなどの討論番組でもお声がかからなかったりする。離党者も相次ぎ、2015年末には国会議員が4名となったので、ついに政党要件を外れてしまった。さらに、出馬を約束したはずの乙武洋匡氏は、自民党と二股かけていたっぽい…松田氏の心境たるや「密かに将来を約束していた彼氏が、資産家令嬢と婚約したことをニュースで知らされた女性」のようなものであろう。踏んだり蹴ったりである。
と思いきや、2016年3月に乙武氏のスキャンダルがスクープされた。どうやら彼は、いろんなところで二股をやらかす常習犯らしい。「あんな二股男、深入りする前に判ってよかったよね、次いこっ!」と、松田氏には言ってあげたい。そして、これを契機にV字回復して欲しい。
崖っぷちの松田氏が学ぶべきは、アメリカ大統領予備選で連勝中のトランプ氏だと思う。ヒモ付き献金に頼らなくてもよい大富豪なのでストレートに本音をぶっちゃけて、薄っぺらい美辞麗句を聞き飽きたアメリカ有権者の少なくない層が、彼を熱狂的に支持するようになった。松田氏も(日本人としては)富豪であり、政治的な後援団体はないが遠慮も要らないので、「ダメなら政界引退!」の覚悟でイチかバチか「ストレートな本音」を有権者にぶつけてみてはどうだろうか? たとえば「世の中を動かすには金が要ります。被災地も保育園も、金が必用です。私は金の作り方をどの党首より知っています」のように。
政府の仕事は「金を使う」「金を集める」の二種類に分類される。前者が好きな人は多いが後者は少ない…その結果、今の日本政府は約1000兆円の借金を作った。それなのに今もなお、前者については熱く語るが後者についてはバックレる候補者が多い。「ぐずる子供に、駄菓子やゲーム機を与えてごまかす親」のようなものである。今の日本に必要なのは、「そろそろ宿題に手を付けないと大変なことになるぞ」と叱る大人ではないか。
具体的には「消費税10%増税、軽減税率なし」「年金は70才から」「解雇規制緩和」といった公約を提唱し、「日本社会が先送りしてきた宿題に手を付ける」「現実を直視して、次世代の為には痛みを伴う改革を躊躇しない」党としてアピールするのだ。少子高齢化の地方1人区でこれをやったら自殺行為だが、定員6名の東京区や比例区ならば勝算はあると思う。「反安保」「反原発」「反TPP」のような「反○○」アピールは、いいかげん聞き飽きた。
「解雇規制緩和」も、2010年頃の勢いのあった「みんなの党」が取り組んでいたが、解党と共に消えた重要テーマである。日本型雇用(終身雇用+年功序列)とは、若い世代を搾取して中高年がラクをする「ネズミ講の一種」でもある。それでも「高度経済成長期で定年50~55才」だった時代にはそれなりに廻っていたが、「少子高齢化+低成長+定年65才」の今後も維持することは不可能である。
「保育園問題とは、不足よりも認可/無認可の格差」と以前に書いたが、補助金たっぷりの公立認可園の中にも「働かないベテラン正規職員と、へとへとですぐ辞める非正規」という日本社会の縮図のような格差があり、単純に「保育士全員の給料を上げれば一件落着」という問題ではないのだ。「給料半年分で金銭解雇可能」のような法制度は「働かないベテラン正規職員」の激減を可能にし、若者・女性・非正規労働者の多くにとっては朗報となるだろう。
あと、ホントに国際派の経営者なのだから、それをアピールしないのはもったいない。「ショーンK騒動」のように、日本人はまだまだ「英語ペラペラ」に弱い。SEALDsだって名前と発音で「なんかカッコよさげ」と得しているっぽいし。「Yes We Can」やら「Intel Inside」のようなイケてる英語のキャッチコピーを作って、党首がそれっぽく発音したのをYoutubeや政見放送で流せば、「SEALDs萌え」を含めた若手有権者を振り向かせられるのではないか。
筒井冨美 フリーランス麻酔科医
1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。2013年から、東洋経済オンライン「ノマドドクターは見た! 」で論壇デビューし、執筆活動も行う。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」では、非正規労働者の一人として「解雇規制緩和」を提唱している。
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