変化して4場所ぶりVの白鵬「自分もあれで決めるつもりはなかった」

2016年3月28日6時0分  スポーツ報知
  • 優勝インタビューで目頭を覆う白鵬
  • 支度部屋で賜杯にキスする白鵬

 ◆大相撲春場所千秋楽 ○白鵬(突き落とし)日馬富士●(27日・エディオンアリーナ大阪)

 4場所ぶりの復活Vを果たした西横綱・白鵬が、悔し涙を流した。勝てば36回目の優勝が決まる東横綱・日馬富士との結びの一番で変化して勝利。熱戦を期待した館内からはブーイングとヤジが飛び優勝インタビューで言葉に詰まり号泣した。西大関・稀勢の里は東大関・豪栄道との2敗対決を制して自己最多タイの13勝目を挙げ、夏場所(5月8日初日・両国国技館)は綱取りがかかるが、協会幹部は慎重な姿勢を示した。12勝を挙げた東前頭筆頭・琴勇輝が初の三賞となる殊勲賞を獲得した。

 言葉が続かない。「8か月の間、優勝から遠ざかっていました…」。白鵬は優勝インタビューの最初の質問で、いきなり語尾を詰まらせた。その背後では、「かわして勝ってうれしいかー」と手厳しいヤジが飛ぶ。横綱同士の熱戦が期待されただけに「千秋楽、ああいう変化で決まって申し訳ない」。こう絞り出すと満員の館内には罵声が歓声を大きく上回り、大横綱は目頭を押さえ涙を流した。

 土俵下では豪栄道との2敗対決を制した稀勢の里が見上げていた。勝てば優勝、負ければ決定戦。だが結びの一番は誰もが予想できない結末。立ち合いで右手を日馬富士の眼前に差し出すと左に変化。猛然と突っ込んだ相手横綱は勢い余って土俵の外まで足を踏み出した。わずか1秒1。白鵬は自らの今場所最短相撲で36度目の賜杯をつかんだ。

 「いろいろこみ上げるものがあった。感極まってね。自分もあれで決めるつもりはなかった」。表彰式後、意図的ではなかったことを力説した。日本出身力士として10年ぶりに優勝して綱取りに挑んだ琴奨菊、初日から10連勝した稀勢の里と日本人大関に期待が集結。

 一方で白鵬は4日目、中日と2度のダメ押しが議論を呼んだ。井筒審判副部長(元関脇・逆鉾)を骨折させた2度目のダメ押し翌日には審判部内から「もう一度やれば出場停止も」との意見が出た。入り乱れていた感情が、ヤジを耳にし涙となってこぼれ落ちた。

 勝ちたい理由があった。父・ムンフバトさん(74)は年1回のモンゴル相撲で6度の優勝。場所前に、「大相撲は年間6回優勝できる。6×6の36回で父に並びたい」と4場所ぶりの優勝にこだわり、目標をクリアした。

 「ホッとしました。勝負ですからね、どちらかが勝つ。次は目指せ1000勝ですね」。今場所は横綱勝利数(1位)、通算勝ち星(3位)で記録を更新。あと1勝で魁皇に並び史上1位の幕内879勝に到達する。日本人大関への期待が高まったが、大横綱の視線は前人未到の境地へまい進することに向かっている。(網野 大一郎)

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