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スマホ写真が要件定義書? 開発現場の“定石”を再考しよう
2016年3月9~15日にかけて開かれた、米Google DeepMindの「AlphaGo(アルファ碁)」と、韓国の李世ドル(イ・セドル)九段による囲碁の五番勝負が興味深かった。アルファ碁が世界トップクラスのプロ棋士に4勝した結果にも驚いたが、それ以上に筆者が興味深かったのはアルファ碁の独特の打ち回しである。
プロ棋士が一目で悪手と判断する定石から外れた手が、後になって実は好手だったと判明する事態がしばしば見られたからだ。攻略のアプローチが全く違うため、人間にとっての前提や制約に影響されず、好手が出るのかなと感じた。
人間は一般に、広大な19路盤を隅・辺・中央と“因数分解”して把握・分析しやすくした上で、石を打つ数が少なくて地(領地)を確保しやすい隅から優先的に攻略する。一方、アルファ碁は盤面を19×19ドットの画像と認識して全体的に捉え、どこに石があると勝ちやすいのかを“直観”しているようだ。
いささか強引だが、筆者の取材対象であるシステム構築の現場でも、既存の“定石”を再考すべき時期に差し掛かっているように感じる。特に注目したいのが、利用部門の要求をヒアリングしてシステム構築の要件としてまとめる、システム企画~要件定義のフェーズである。事実、現場の第一線で活躍するITエンジニアに取材したところ、定石から外れた手がいくつも飛び出していた。
変わりやすい要求は聞かない、書かない
一例は、TISの児玉 健氏(産業事業本部 東日本産業事業部 東日本産業システム第1部主任)らのチームである(写真)。児玉氏らのチームは、ある企業の学生向け教育動画コンテンツサービスのシステムを構築・運用する。児玉氏は利用部門の要求をヒアリングし、システム開発の要件にまとめて後工程に伝える役割を担っている。
チームでは要件定義のドキュメントを作成せず、手描きの簡単な画面遷移図で代替している。利用部門とのミーティング中に、利用部門から出てきた要求に応じた画面の流れをホワイトボードに描く。決済系のシステムのフローであれば、「ログイン画面」「トップ画面」「決済方法の選択画面」といった具合である。この簡単な画面遷移図には、基本の流れと画面ごとの目的などを描く。画面内の項目やデザインイメージなどは全く記載しない。
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