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 投開票まで1カ月を切った衆院京都3区補選(4月12日告示、24日投開票)。自民党が「不戦敗」を選ぶなか、注目された民主党と共産党の「野党共闘」は風前のともしびだ。選挙の準備は慌ただしく進むが、夏の参院選での野党協力の枠組みに影響しかねない。

 27日に維新の党との合流を控える民主党。補選に立候補を予定する現職の泉健太氏(41)=比例近畿=の地元事務所のスタッフが、新党名の「民進党」入り選挙ポスターを発注できたのは22日だった。泉氏は党本部と掛け合い、党名の書体が発表される30分前に画像データを入手。印刷業者に送った。ロゴマークは公募となり、間に合わない。

 民主党は参院選に向け、野党間の選挙協力の調整を進める。同日に補選がある北海道5区では野党統一候補が実現したが、京都では民主党府連が協力を拒んだ。泉氏は23日、「京都において党対党の共闘はしない」と宣言。13日の民主党府連大会では「いずれの選挙でも共産党と共闘しない」と踏み込む、新年度の活動方針を決めた。

 一方の共産党は翌14日、自主投票を決めた。府内の小選挙区で候補者を立てないのは初めてだ。JR京都駅前で20日、街頭演説を行った志位和夫委員長は「京都の民主党が、共闘をかたくなに拒否するという大変残念な態度を取っている」と苦言を呈しつつも、「(参院選での協力を含む)野党合意を誠実に実行するという大局に立った」と、自主投票に理解を求めた。

 背景には、京都に固い地盤を持つ共産党と民主党の激突の歴史がある。泉氏が京都3区で戦った過去6回はいずれも共産党と対決。夏の参院選京都選挙区(改選数2)でも、しのぎを削る。5期目の泉氏は保守層にも浸透。共産党との協力による支持者離れを心配する。協力拒否の姿勢を見せ、共産党と長年対立する公明党から「一部でも票が流れてくれれば」(陣営関係者)との計算も働く。

 共産支持層も一定程度、泉氏を支援すると見られる。京都市内の60代の共産党員は「自公の補完勢力を勝たせるわけにはいかない。泉氏に票を入れざるを得ないのが、普通の共産党支持者の感覚」と語る。

 一方、元党職員の森夏枝氏(34)を擁立するおおさか維新の会。検討中の政策ポイント集の表題は「おおさか維新の身を切る改革は 民・共には絶対できない改革です!」。公務員報酬の削減は「公務員労組に支持された民・共には絶対にできません」とうたう。

 京都市内で21日、国会議員と大阪、京都の地方議員ら約70人を集めた選対会議を開催。「民主と共産の共闘を徹底的に批判していこう」と確認し、馬場伸幸幹事長は記者団に「民共連合を潰す戦いだ」と語った。

 民主、共産両党は協力を否定するが、松井一郎代表は「(共産党が)候補者を出さないという限りは協力態勢」と主張。「デマ」(泉氏)との反論を無視する形で「野合」批判を繰り返す。不倫が発覚した宮崎謙介前衆院議員(自民を離党)の辞職に伴う今回の補選で、候補者擁立を見送った自民党の支持層を取り込む戦略でもある。

 ただ、京都の地方議員は10人。約160人の大阪と比べ地力に欠ける。大阪の組織力を生かし、ビラ配りや戸別訪問を行う予定だ。27日を「統一行動デー」とし、大阪の地方議員1人あたり1千枚のチラシポスティングをノルマとした。

 日本のこころを大切にする党から立つ派遣社員の小野由紀子氏(37)は25日、京都市で記者会見。自民党の擁立見送りで「有権者として選択肢がなくなると危機感を覚えた」と話し、やはり、保守票の受け皿を目指す考えを示した。

 幸福実現党は府本部副代表の大八木光子氏(31)を擁立。元塾アルバイトの郡昭浩氏(55)と内科医の田淵正文氏(57)が無所属での立候補を表明している。(波多野陽、岡本智、宮崎勇作)