
■それぞれの業種を活かした活動
はじめにモデレーターを務めたETIC.理事・事業統括ディレクターの山内幸治が、このSessionではより具体的に、東日本大震災に応じて企業が実施してきたCSR活動について報告・議論していく、と主旨を説明しました。

■コミュニケーションロボットやタブレット端末の実証実験へ
やがて同社の活動は、まちづくりや子育て、就労などにかかわるNPOなどへの支援、コミュニケーションロボットやタブレット端末など仮設住宅での情報技術の実証実験、地デジの空きチャンネルを利用したコミュニティテレビなどへと広がっていきました。また、南三陸町と復興連携協定を結び、社員のキャリアを活かしたボランティア活動として、南三陸町観光協会のマーケティング業務の支援などを開始しているとのことです。「なぜ南三陸町なのか?」ということについては、「防災庁舎で弊社の社員が1人犠牲になっているのです」と、その理由を明かしました。
■彼はいま漁師見習いです

また同社は、震災遺児たちの高校卒業後の進学環境を奨学金で支援する「みちのく未来基金」を、カゴメやカルビーとともに設立(後にエバラも参加。支援企業は約700社)。そのほか石巻市で、イスラム教徒向けの「ノンアニマル・ノルアルコール食」を開発するなど、同社の活動範囲は幅広いものです。
■『クルマを止めない』ということをこころがけてきました
いすゞ自動車株式会社CSR推進部社会貢献グループ担当部長の山田和光氏が説明を始める前に、ETIC.の山内が、東北を支えていく現地のリーダーたちを企業が支援し、地域の復興を支えることを目指す企業コンソーシアム「みちのく復興事業パートナーズ」の概略を説明しました。
山田氏は「いすゞ自動車は『みちのく復興事業パートナーズ』の7番目のパートナーとして参加しました。社会貢献の経験が浅い会社であります」と謙虚に話し始めたものの、震災発生直後から自衛隊や消防の災害支援車両や物資運搬車両などの点検・修理・部品供給に取り組み、また、運行情報システム「みまもりくん」を搭載した車両のデータを集約し、被災地域のトラック運行実績情報マップを提供してきたといいます。「『クルマを止めない』ということをこころがけてきました」と山田氏。

■「やるからには長くやっていかないと」

河崎氏は「基金をつくったのはいいのですが、使い途への懸念がありました。株主から叱られるかと思ったら、総会では『よくやった!』といわれました」と振り返ります。
山田氏は「やっぱり考えたのは、一時的な活動にはしたくないな、やるからには長くやっていかないと、ということでした。本業や会社の資産を活かして、です。何をやったらいいかという壁にもぶつかりましたが、幸いにも『パートナーズ』という機会にも恵まれましたし」。
最後に山内が「課題はやまほどあります。これまでの東北でやれたことを、これからの東北で活かしていきましょう」とSessionをまとめました。
■一時的ではなく、長期的な活動を
ある参加者はアンケートで「長期に取り組む重要性をあらためて考えさせられました。しかし、個人の意志や突発性ではなく企業のトップがコミットすることや、風土、資金の面が課題だと思いました」と感想を述べました。「一時的ではなく、長期的な活動を」ということは、シンポジウムを通じて繰り返し主張されたことですが、あらためて確認されました。
■東北は「学びの多い場」

それを受けてETIC.の山内は「東北は実験場になりうるかを考えてきたのですが、非常に学びの多い場だということを改めて確認できました」と話しました。

今後もこのプロジェクト「THINK TOHOKU 2011-2021 これまでの5年とこれからの5年」では、シンポジウムや研究会、フィールドワークなどを続けていくことが予告され、シンポジウムは幕を閉じました。

