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女児の髪無断で切る 佐賀県中央児相

佐賀新聞 3月27日(日)17時28分配信

保護時「脱色、背まで伸びていた」

 佐賀県中央児童相談所(児相)が県東部の未就学の女児(6)を一時保護所に受け入れる際、保護者に無断で髪を切っていたことが26日分かった。児相は「脱色して背中まで伸びていたため、他の子と共同生活する上で必要な措置だった」と説明するが、保護者は反発し、識者から「子どもの人権侵害に当たる恐れがある」との指摘も出ている。

 一時保護所は児童相談所に併設され、児童虐待などで緊急に家庭から引き取る必要のある子どもを入所させる施設。関係者によると、女児は3月上旬、家庭トラブルを抱えた母親の希望で児相が一時保護。受け入れから2日後、女性職員が女児の髪を20センチ程度切り、肩上の長さにした。保護者には事前に知らせておらず、女児の父親と連絡を取り合った際に事後報告した。

 児相は保護者と面談し、無断だったことを謝罪したが、「集団生活で規律を守るため。子どもを世話する監護権の範囲」として問題はなかったと説明。保護者は「髪を結んだり巻いたりしておしゃれが好きな子の気持ちを傷つけた。児相の都合だけで切っていいのか」と納得しなかった。面談後に女児は保護者の元へ戻った。

 児相は一時保護の子どもの髪が脱色していると必要に応じて同意を得て理髪する内規を設けている。髪を切る前に女児から同意は得ていなかったが、切る際に拒否する様子はなかったという。児相は「1人だけ髪の色が違うと他の子から攻撃される恐れもあり、生活が始まっていて安全上やむを得なかった」とする。

 厚生労働省は「施設の運営の中でいろんな事情があり、監護権の関係からも髪を切るのは一概に良いとも悪いとも言えないが、少なくとも事前に相談するのが望ましい」としている。

権利侵害の恐れ

 一時保護に詳しい安部計彦西南学院大教授(児童福祉学)の話 今まで聞いたことがないケース。髪を切るのは子どもと親の価値観や感情にもかかわるのに、対応が乱暴で権利侵害の恐れがある。一時保護所ではさまざまな課題を抱えた子どもが集団生活をするため一定のルールが必要だが、少人数の職員で多くの子どもを担当し、管理する意識が強まる傾向がある。外部の目も入らないので施設内部の価値観が固定化して子どもの人権を必要以上に制限してしまう構造があることを児相は自覚すべきだ。

最終更新:3月27日(日)20時8分

佐賀新聞

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