ごめんって言えばなんでも気がすむと思ってるんだから、ほんとむかつく。
なんて愚痴は、もうすでに630回くらい聞いた。
恋人とケンカしてしまう。
仲直りしようとする。
だから謝る。なぜ怒ってるのか意味はわかってないけど。
「ごめんって言えばなんでも気がすむと思ってるの?」
そう言ってまた怒られる。
じゃあどうしたらいいって言うの。な?
っていうのは、怒られたほうの愚痴だ。
で、だいたい男だ。
わからんでもない。
相手が怒っていて、そして明らかにじぶんの何かで怒ってる。
そしたら、謝ろうってのが筋だ。当然の発想。
相手がどうして怒ってるのか分かっていて謝ることもある。
返信をしなかったこと。
記念日を忘れていたこと。
相談しても聞いてあげなかったこと。
なんとなぁく分かっているから、「あ、あのことだな」と思って謝る。ごめん、と。
それでも、彼女は怒る。
「は? 謝ればすむと思ってんの?」
やっちまった感が満載だ。
じゃあどうしたら許してくれるの?
と、男性陣を代表して、そんな「謝れば済むと思ってんだろ?問題」への解決の糸口を見つけようと数人の女性に質問をしたことがある。
女性陣の的確で理路整然な回答を、ざっくりまとめるとこうだった。
「こっちがどうして怒ってるのかを理解して、『〜してごめんね』とか『〜して嫌だったよね』とか言ってくれれば気が楽になる」
ということだった。
納得、である。
なるほど、ただ謝るなっていうのはそういうことだったのか。きちんと相手が嫌がっていたことを理解してますよ、もうやりませんよという意味を込めて言葉に示して、その上で謝ればいいのか。なるほど。
しかし、である。
そう言ってくれれば許せるとか言いつつも、
実際のところ、彼女らの中にはそれでも許さない人は多いだろうと思う。
たとえば、こんなふうに。
やっちまった。記念日を忘れてしまった。
「記念日を忘れて、ごめんね」
……沈黙……
「謝れば済むと思ってんでしょ」
うごっ
きっとこうなる。いや間違いなくこうなる。
って言うかやったけどこうだったパターンめっちゃ多かった。
セオリー通りになんてこの世の中だいたい行かないのが常なのだ神様の嘘つき。
「謝れば済むと思ってんでしょ?」と言うとき、
彼女らは何を求めているんだろう。
そう思って
こういうセオリーを乱発しては返り討ちにあい続けてきた結果、ぼくはついにたどり着いた。
彼女らが意識していないセオリーが、実はあるのだということを。
それは、
3度、頭を踏んづけたい。
ということ。
これ。これに尽きる。
記念日を忘れてしまったとき
「ごめんね」
「……何?」
「記念日を忘れてごめんね。本当に悪いことしてしまったよね。傷つけた」
「……謝れば済むと思ってんの?」
「ごめんなさい」
「……」
そして、すぐにではなく、「ニッポンの夜明けぜよ」状態でじわりじわりと、相手が許すモードというか、何もなかったモードに切り替わっていく。
女性に多いのが、一気に切り替えるのではなくじわりじわり気分を切り替えるひと。
こうやって男性側は、ごめんなさい、と言って3度頭を踏んづけられる。
先回りして全てを一気に謝罪しようなんてしてはいけないし、そんなことしたらきっと「そう言えば許してくれると思ってるんでしょ」と言って待ち構えていたフリッカージャブが炸裂する。
ごめんなさいと言って3度頭を踏んづけられる。
このセオリーが言葉として思い浮かんだとき、高校時代に古典の先生が、古い時代は男性が女性に歌を書いてラブレターとして女性の家を通して手渡すんだけど、だいたい最初はどんなイケメンでも、どんな良い歌を詠んできても断るのだ、それでもまた飽くなきチャレンジをしている人がお目通りさせてもらえるのだ、という授業をある春のよく晴れた日にしていたことが頭をよぎった。
ごめん、と言わなければいけない場面は、長く付き合うほどに出てくるものだけれど、それは何年付き合っても省略できないし、しちゃいけない儀式なんだろうな。
人生をかっぽしよう
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