ヤフー 障害者アスリート支援で新雇用制度 来月から

障害者アスリートの仕事と競技の両立が課題となるなか、大手IT企業の「ヤフー」は、正社員として入社したうえで、競技に専念したい期間は契約社員に切り替えられる新たな人事制度を来月、導入することになりました。
2020年の東京パラリンピックを前に、企業の間では障害者アスリートの雇用に関心が高まっていますが、選手側は競技に専念するため、契約社員として働くことを望む一方で、引退したあとの生活への不安の声も上がっています。
これを踏まえて「ヤフー」は、障害者アスリートが仕事と競技の両立がしやすくなるよう、正社員と契約社員を行き来できる新たな人事制度を来月、導入することになりました。
具体的には、正社員として入社したうえで、パラリンピックへの出場を目指して競技に専念したい期間は、いったん業務の負担が少ない契約社員に切り替えることができるほか、契約社員の場合も競技を引退したあとは、正社員に切り替えることができるとしています。
東京パラリンピックで新たに実施されるバドミントンでの出場を目指し、この人事制度の利用を決めたヤフーの杉野明子さんは、「仕事自体はずっと続けてキャリアアップを図りたいという思いがあり、柔軟に働き方を切り替えられるのは魅力的だ」と話しています。

制度を利用する選手は

ヤフーに勤める杉野明子さん(25)は、財務部門で働いています。生まれた時から左腕に障害があり、肩より先は思うように力が入りません。中学2年生からバドミントンを始め、3年前、ヤフーに正社員として入社したあとも練習を続けてきました。
おととし、アジア大会の女子ダブルスで銅メダルを獲得。有力選手として注目を浴びるようになります。
バドミントンが2020年の東京パラリンピックから正式種目になることが決まり、出場を目指したいと考えるようになりました。しかし、正社員の杉野さんは平日は仕事に専念していて、筋力アップのトレーニングしかできません。ラケットを持って本格的な練習に打ち込めるのは、仕事のない土曜日と日曜日だけです。海外遠征のために有給休暇も使い切ったと言います。
杉野さんはパラリンピック出場の夢を実現するため、より業務の負担が少ない契約社員としてほかの企業への転職も検討したということですが、今の会社が正社員と契約社員を行き来できる柔軟な人事制度の導入を決めたことから、利用することにしたということです。
ヤフーは現在、正社員の杉野さんのほか、車いすマラソンに取り組む契約社員の合わせて2人の障害者アスリートを雇用していて、来月からさらに2人を契約社員として採用することが決まっています。

障害者アスリートの雇用 企業の関心高まる

障害者アスリートの雇用を巡っては、大手電機メーカーの「三菱電機」も選手の柔軟な働き方を支援する制度を設けています。現在、アーチェリーの男子選手が契約社員として働いていて、引退したあと本人が希望すれば、正社員に切り替えることができる仕組みです。
JOC=日本オリンピック委員会が運営する、アスリートを対象に採用の仲介を行う事業、「アスナビ」の実績では、障害者アスリートの採用は2013年が1人、2014年が4人、2015年が5人となっています。
ことしは3か月間で、すでに去年の実績に並ぶ5人の採用が決まっていて、2020年の東京パラリンピックに向けて、企業の関心が高まっていることがうかがえます。