【発言】反捕鯨の裏にあるもの

コーヴの反証映画・八木景子監督

2016/3/9 16:01

画像 八木景子監督にカメラを向けるシー・シェパードの活動家(C)2015YAGI Film Inc.画像 和歌山県太地町の海で小型の鯨と泳ぐ海水浴客(C)2015YAGI Film Inc.画像 八木景子監督 古式捕鯨発祥の地とされる和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に取り上げ2010年の米アカデミー賞を受賞した映画「ザ・コーヴ」の反証映画「ビハインド・ザ・コーヴ」が公開されている。過激な反捕鯨運動の裏側には何があるのか。八木景子監督(48)に聞いた。

 ▽竜田揚げ

 ―日本に南極海での調査捕鯨停止を命じた2014年の国際司法裁判所の判決が映画製作のきっかけだったとか。

 「大好きな鯨の竜田揚げが食べられなくなるのではと危機感を持った。反捕鯨団体シー・シェパード(SS)を撮影したカメラマンのサイモン・ワーン氏がSSの欺瞞性を告発した記事や、国際捕鯨委員会の日本代表代理だった小松正之氏の著作を読み、何かくさいぞと思った」

 「和歌山大にいたワーン氏に話を聞き太地町に入った。小さな町に世界中から大勢の反捕鯨活動家やメディアが押し寄せている実態に驚き、そのまま4カ月滞在することになった」

 ▽映像には映像で

 ―取材・撮影を進めながら捕鯨やイルカ漁のことを調べる日々が続いた。

 「知れば知るほど矛盾だらけ。海外の大手メディアによっていかに日本のイメージがゆがめられてきたかが分かった。オーストラリアではすし屋で鯨を注文した日本人を射殺すという内容のテレビCMまであった。怒りがこみあげ、映像でやられた借りは映像で返そうと思った」

 ―世界におどろおどろしいイメージで伝えられた太地町の人々の心の扉は重かった。

 「ザ・コーヴ製作者や活動家は意外にフレンドリーだった。逆に地元の人はカメラの前で話してくれるまで3カ月くらいかかった。途中で何度も心が折れそうになったけど、常にそういうストレスより怒りの方が上回った」

 ―日本政府の交渉担当者にも取材、史料に当たるため米ワシントンも訪れた。

 「日本側の姿勢にも問題があると思った。特に外務省は反論をする気があるのだろうか。モントリオール世界映画祭で私の作品を見た現地の日本大使館幹部は『これはプロパガンダ映画ですね』と言った。私も周囲にいた日本人の観客もあぜんとした」

 ▽レッテル

 ―捕鯨を好意的に取り上げると「右翼だ」と中傷される。捕鯨活動妨害で国際指名手配中のSS創設者ポール・ワトソン容疑者も「八木はナショナリスト」とコメントした。

 「インターネット上で『死んでくれ』と書かれたこともある。私は右も左も、上も下もなくただ事実を並べただけ。反捕鯨派の人は私に右翼というレッテルを貼ろうと必死になっているけど、うまくいかず焦っているようだ」

 ―1月の公開時には映画や劇場のホームページがサイバー攻撃を受けた。

 「ザ・コーヴの時にもあったが、そうした上映を阻止しようとする動きには屈しない。ややこしいことには関わらない事なかれ主義をなくすこともこの映画の目的の一つだ」(聞き手 共同通信=松村圭)

 東京での公開は3月11日に終了。今後、北海道、神奈川、長野、愛知、京都、大阪、沖縄の各道府県で公開。東京を含め他の場所での公開を交渉中。