子どもたちは明るかった。知らない大人とすれ違っても礼儀正しく頭を下げ、皆で集まって大学進学の話や最近人気の韓国映画『東柱』の話をしていた。だが、この子たちが通っているのは決してありふれた学校ではない。各教室の正面に故・金日成(キム・イルソン)主席と故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の肖像画が掲げられ、校長は金日成主席、金正日総書記、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の親子3代を「主席様、将軍様、元帥様」と呼んだ。金総書記の誕生日である「光明節」記念ポスターと「米国帝国を打ちのめそう」というスローガンがあちこちに掲示されていた。
本紙取材チームが訪れた東京朝鮮中高級学校(東京都北区)は、まさに日本の中の「ミニ北朝鮮」だった。日本で生まれ育った在日同胞(在日韓国・朝鮮人)の10代が2016年3月、東京中心部で「朝鮮労働党の末端基層組織は党細胞」などと書かれた教科書で学んでいた。女子生徒は民族衣装の黒いチマチョゴリ、男子生徒は日本で一般的な黒い学生服を着ていた。
1955年に結成された在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の加入者(または影響下にある人)が全盛期の53万人から今や8万人に減少したが、朝鮮総連系の朝鮮学校も同じ道をたどった。朝鮮学校は、75年には日本全国に161校あったが、今では68校に減っている。生徒数も同期間に4万6000人から6000人台に減少した。
だからといって、朝鮮学校を見くびったり不憫(ふびん)に思ったりするのは間違っていると言う韓国政府や在日本大韓民国民団(民団)の関係者、在日同胞研究者は多い。朝鮮総連は朝鮮学校のおかげで同胞社会に深く根を下ろすことができ、今も朝鮮学校が総連の最後の支えになっているというのだ。韓国人が同窓会を開くのと同じように、各朝鮮学校の卒業生も同窓で集まっており、朝鮮学校のネットワークから外されれば同胞社会で足場を築くのは難しい。