石川春菜
2016年3月27日08時56分
拝啓、名前も知らないあなたへ――。手紙にしたためられた「水曜日の出来事」が集まる場所がある。熊本県津奈木町の赤崎水曜日郵便局。ここへ出した手紙は見知らぬ誰かへ届けられ、自分の元にも手紙が届く。開始から3年。5千以上の思いをつなぎ、今月末に「閉局」を迎える。
郵便局は浅瀬に打った支柱の上に立つ廃校にある。潮が満ちると海に浮かぶように見える不思議な場所。水の上の小学校。大陸と大陸をつなぐもの。週の真ん中、忘れ去られてしまいそうな日常に思いを寄せてほしい――。そんな思いから「水」曜日と名付けた。
発案者で、同県八代市出身の映画監督、遠山昇司さん(31)は手紙を通じたつながりを「相手を思いやりながらの、刹那(せつな)的な出会いが生み出した美しさ」と表現する。
これまで全国から5400通を超える手紙が行き交った。2歳から94歳まで幅広く、手紙というアナログな手法ながら、SNSなどに親しむ若い世代も多い。遠山さんは言う。「SNSは匿名性が強いと相手を思いやれず、匿名性が弱いと気を使って疲れる。ささやかなつながりが求められていたのでは」
◇
手紙の内容は何げない日常や恋する気持ち、人間関係の悩みなどさまざまだ。
残り:2249文字/全文:2765文字
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朝日新聞社会部
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