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【群馬】

1年後108世帯打ち切り 「福島へは戻れない」

福島県からの避難者らが入居する県営住宅=前橋市で

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 東京電力福島第一原発事故に伴って群馬県内へ避難している被災者のうち、福島県が来年三月末で住宅の無償提供を打ち切る自主避難者が昨年十月現在で百八世帯いることが、福島県の調査で分かった。対象の母子家庭からは「子どものためにも、事故の影響が残る福島県へは戻れない。今の住宅で暮らし続けられるように延長してほしい」と求める声が上がっている。 (菅原洋)

 事故を受けて福島県は災害救助法に基づき、自主避難者を含む被災者が転居した公営住宅や民間の借り上げ住宅などの家賃を国費を充てて全額補助している。

 しかし、福島県は昨年六月、政府から避難指示を受けている被災者を除く自主避難者について、来年三月末で無償提供を打ち切る決定を公表。同県は民間の賃貸住宅に限り、低所得者の二年間の家賃を一部補助する方針を示している。

 群馬県によると、同法に基づいて県内で住宅の無償提供を受けているのは、二月末現在で百八十四世帯の計四百六十四人。この世帯数は自主避難者と政府から避難指示を受けている被災者の両方を含めている。

 ただ、政府は来年三月までに、現在は福島第一原発一帯に出している避難指示について、事故の影響が強い帰還困難区域を除いて順次解除することを目指している。このため、住宅の無償提供が打ち切りとなる自主避難者が群馬県内でも今後増える可能性がある。

 こうした中、鳥取県は県費を充て、自主避難者を含む被災者への住宅の無償提供を二〇一九年三月末まで延長する方針を決めている。打ち切りまでの一年間、群馬県や全国各地で、自主避難者への救済策が課題になりそうだ。

◆3子育てる43歳母

 「原発事故後に1週間以上、福島県内の野外で遊んでいた長女の甲状腺に、医師から事故が原因とみられる異常が出ていると診断された」

 同県いわき市から渋川市へ自主避難している会社員の女性(43)は、住宅の無償提供の打ち切りを1年後に控え、生活や将来に不安を募らせている。

 女性は東日本大震災で自宅が半壊。2012年1月に縁のない渋川市へ避難し、公営住宅に入居する。長女(13)、長男(9)と、事故後に生まれた次女(4)を女手一つで育てている。

 月収は10万円前後。児童手当と母子手当が月に合わせて数万円あるが、原発事故に伴う公費の支援は住宅の無償提供のみで、現在は東京電力からの補償は全くない。自費で民間の住宅を借りて生活するのは厳しい家計状況だ。

 無償提供打ち切り後も公営住宅に自費で入居できるかを女性が担当部局に聞くと、一般の入居者と同等に審査と敷金や礼金などが必要との説明を受けたという。福島県は打ち切り後、公営住宅の家賃は補助しない見込みだ。

 「長女が受験を控え、子どもたちに友達もできた。自分も近所や避難者などのつながりを築いてきた。正社員の仕事も失いたくない。もう、事故前には戻れない。どうしたら、このままの生活が続けられるのか−」。女性の悩みは深い。

 原発事故と甲状腺がんをめぐっては、福島県内の18歳以下(当時)に通常の数十倍というがんが見つかっているが、因果関係にはさまざまな見解がある。

 

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