日韓慰安婦合意 朝日新聞の欺瞞
長谷川熙(元朝日新聞記者)× 西岡力(東京基督教大学教授)
北畠氏と吉田清治氏の関係
西岡 ちょうどその頃、私は92年4月号の「文藝春秋」に「『慰安婦問題』とは何だったのか」を書くために、韓国内で取材をしていました。当時韓国には戦時中のことをよく覚えている年長者が、新聞社にも政治家にも大学教授にも多数いました。彼らに「日本軍が朝鮮人女性らを強制連行して慰安婦にしたのか」を尋ねると、彼らは揃って「何をバカなことを」「当時の朝鮮は日本よりも貧乏だったんだ。日本でも貧しい家が女の子を売ることがあっただろう。それと同じで朝鮮人の女衒(ぜげん)がいたんだ」「日本の軍人が朝鮮の農村に入っていって女を強制連行だなんてできるわけがないでしょう」と否定された。これが私の原点です。
長谷川 今回、北畠氏の高校の同級生で親友だった人物に話を聞きました。「恥ずべきコラム」の何年か後にこの親友が北畠氏と会った際、「(吉田氏が慰安婦狩りをしたという)済州島ならすぐ行ける所じゃないか。なんで裏付け取材もしないでああいうことを書くのか」と聞くと、北畠氏は急に不機嫌になり、10代からの密な交友はそれを境に無くなったそうです。
西岡 『崩壊』で最も注目すべきポイントの一つが北畠氏の言動です。88年の「AERA」創刊から1、2年の一時期、長谷川さんの向かいのデスクに北畠氏が座っていたそうですね。そこで北畠氏と吉田清治氏が電話でヒソヒソ語り合う姿を度々目撃したと書かれています。
長谷川 はい。彼はしばしば吉田氏と電話で話しており、電話を切ると、吉田氏について「世間の圧力が強くなると日和ってしまう」「違うことを言い出す」「取材するこちらが常に手綱を強くもっていないといけない」などと言っていました。