- 江橋よしのり
- 2016年3月26日(土) 11:56
代表チームのW杯予選敗退の影響は……
なお、開幕に先立って14日に開かれた記者会見には、1部リーグ10チームの監督・キャプテンが登壇。それぞれ今季の抱負を述べたのだが、最も印象的だったのは昨季王者ベレーザの岩清水梓の言葉だった。
「まずチームの話の前に……」と、岩清水は神妙な顔つきで話し始めた。
「先日、なでしこジャパンとして戦って、(リオ五輪の)出場権を獲得できなかったことを、本当にいろいろな人に申し訳なく思っています」
彼女が立つステージの後ろの壁には、今季のスポンサーロゴを並べたボードが貼られている。2008年以来のトップパートナーである(株)プレナスをはじめ、オフィシャルスポンサー3社の三井住友カード(株)、全日本空輸(株)、(株)共立メンテナンスのすべてが契約を更新。さらに(株)三越伊勢丹ホールディングスが今季、新たなオフィシャルスポンサーとして名を連ねた。
またソフトバンク(株)とヤフー(株)はスマートフォン・タブレットによる試合中継サービス「スポナビライブ」(有料配信)を立ち上げた。視聴契約を結べば、なでしこリーグ1部の毎節2試合とカップ戦の一部を視聴できる。昨季、衛星放送により中継されたリーグ戦は年間21試合だったため、露出は2倍を超えることになる。
代表チームの敗退により、国内リーグにも逆風が吹くのではないかと心配した人たちは、これらのポジティブなニュースにひとまず胸をなで下ろしたことだろう。とはいえ、これらの企業は、代表チームの五輪での活躍が話題になり、国内リーグも盛り上がるというシナリオを、おそらく当然のように頭に描いていたはずだ。だがそのシナリオ崩れた今、女子サッカーの魅力を発信できる場所は、今年は国内リーグに限られてしまった。
国内が充実すれば代表が強くなるのか
「女子サッカーのために私たちが」という使命を、リーグとその周辺の関係者がいや応なしに背負うことになった今年は、ひょっとしたら何かが化ける年になるかもしれない。選手も運営もサポーターも、それぞれの立場で何を頑張るのか。そしてメディアがどう伝えるのか。今季のなでしこリーグは正念場を迎えることになる。
一方で、長い目で見ればやはり代表の立て直しも急務であることに変わりない。国内でのカップ戦復活などは「いいニュース」である反面、国内大会でカレンダーを埋めることは、代表チームの強化日数でランク上位国に遅れをとる日本にとって手放しで喜べるものでもない。25日に発表された最新のFIFAランクで、なでしこジャパンは4位から7位に転落。アジア首位の座もオーストラリアに奪われ、このままでは仮に2019年の女子W杯に出場できても、本大会でのシード権獲得が難しい。もし代表が世界大会で優勝争いに加われなくなれば、今季のような女子サッカーに対する支援も望めなくなる。
これまで日本の女子サッカーは、代表(国際競争力の向上)がリーグ(国内大会の成熟)をけん引してきた。だが、その矢印を逆方向に向けても関係は成立するだろうか。ストレートに表現すると、「国内が充実すれば代表が強くなるのか」。各国の代表チームへの力の注ぎ方と照らし合わせれば、おそらく、その矢印は成り立たない。関係者は国内だけに意識を奪われてはいけない。代表の強化と両立可能な国内リーグの「在り方」を、来季以降に向けて今から検討していく必要がある。