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混戦が予想される今季のなでしこリーグ
代表強化と両立可能な「在り方」の検討を

3季ぶりに大会フォーマットを改編

昨シーズンはベレーザがレギュラーシリーズ、エキサイティングシリーズの2冠に輝いた
昨シーズンはベレーザがレギュラーシリーズ、エキサイティングシリーズの2冠に輝いた【写真:アフロスポーツ】

 2016年のなでしこリーグが3月26日(土)に開幕する。1部リーグは、3季ぶりに大会フォーマットを改編。プレーオフ制(10チーム2回戦総当たりによる「レギュラーシリーズ(RS)」と、RSの1〜6位と7〜10位に分割して行う「エキサイティングシリーズ(ES)」)を廃止し、ホーム&アウェー全18節で年間順位を争うことになった。


 また、6月から9月上旬にはリーグ戦を中断して、こちらも3季ぶりとなるなでしこリーグカップを開催する。リーグ戦、カップ戦ともに1〜3位には賞金が設定された。2冠を達成した場合の優勝賞金総額は1500万円。昨季の総額(RS:300万円、ES:700万円)の1.5倍になる。また、2部リーグも同じく10チーム2回戦総当たりによるリーグ戦を開催。2部では初めてとなるカップ戦も新設された。


 1部リーグに参加する10チームは、以下のとおり。(かっこ内は昨季年間順位)


日テレ・ベレーザ(1)

ベガルタ仙台レディース(2)

INAC神戸レオネッサ(3)

アルビレックス新潟レディース(4)

ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(5)

浦和レッドダイヤモンズレディース(6)

伊賀フットボールクラブくノ一(7)

岡山湯郷Belle(8)

コノミヤ・スペランツァ大阪高槻(9) ※スペランツァFC大阪高槻より変更

AC長野パルセイロ・レディース(2部1位)

連覇に挑戦するベレーザ、捲土重来を期するINAC

かつての王者INACは、捲土(けんど)重来を期するシーズンとなる
かつての王者INACは、捲土(けんど)重来を期するシーズンとなる【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 1部リーグの優勝争いは、混戦が予想される。ここ5年を振り返ってみると、2011〜13年はINACが断トツに強く、14年はRSを岡山湯郷、ESを浦和が、ともに大混戦の末に制覇。そして15年はベレーザがRS、ESの2冠に輝いた。


 連覇に挑戦するベレーザは、メンバー全員がなでしこジャパン、または年代別代表の経験者だ。チーム内ではレベルの高い競争が繰り広げられているものの、登録選手はリーグ最少の18名。長期離脱者を出したくないチーム事情から、日頃のトレーニングでも試合の選手起用でも、慎重にならざるを得ないのではないだろうか。また、昨季まで中盤で守備の要として機能した原菜摘子が引退した影響も未知数だ。原のようにボールを持てて、相手ボールにも素早くチャージできる適役の出現が、シーズンの鍵を握るだろう。


 かつての王者INACは、捲土(けんど)重来を期するシーズンを迎える。澤穂希の引退は、戦力的にそれほど痛手ではない。新加入の韓国代表キャプテン、チョ・ソヒョンが、澤の不在を補って余りある存在になるからだ。フィジカルバトルに強い彼女を、クラブはセンターバック候補として獲得したが、五輪予選を視察した松田岳夫監督は代表と同じくボランチで起用することを検討。両足の正確な技術と賢さ、運動量で攻守に貢献しそうだ。また、2年前のU−17女子ワールドカップ(W杯)でMVPを獲得したMF杉田妃和も、加入2年目の今季は積極的な姿勢を打ち出しており、飛躍が期待される。


 そして、昨季2位に躍進した仙台にとって、今季は大チャンスの年となる。昨季は23試合で36失点と守備が課題のチームだったが、今季は守備陣を効果的に補強。浦和から移籍のMF岸川奈津希、新潟から移籍のDF北原佳奈、2年前のU−17女子W杯優勝メンバーで常盤木学園高から加入したDF市瀬菜々、米国プロリーグから完全移籍することになったGKブリトニー・キャメロンが、チームを押し上げる存在となりそうだ。

江橋よしのり
江橋よしのり
ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子バロンドール投票委員。2003年以降、世界の女子サッカーを幅広く取材。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『新なでしこゴール!!』(講談社)など。なでしこジャパン佐々木則夫監督の著書『なでしこ力』『なでしこ力 次へ』(講談社)や、澤穂希選手の著書『夢をかなえる。』(徳間書店)、安藤梢選手の著書『KOZUEメソッド』(講談社)の構成を担当

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