時間がすべてを癒してくれる──何かに苦しんでいるとき、私たちはこの言葉を頻繁に耳にする。だが、悩み苦しむ人たちの話を直接聞いている心理療法士の中には、この考え方自体が私たちにどれほどの悪影響を及ぼしているかという点を指摘する人もいる。どういうことだろうか?
時間が「薬」になるという考え方は、よくある誤解だという。心理療法士に助けを求める人たちはよく、「こんなに長い間、引きずっているべきではないと思う」と話す。つらかった離婚の成立から1年間がたった時点での言葉かもしれないし、愛する人を失ってから2年後の発言かもしれない。こうした人たちは、長期間にわたって自分がもがき続けていること自体に、ストレスを感じている。
実際のところ、こうした人たちの多くは、その苦しみの原因が起きたのがまるで昨日のように思っている。自分の経験について語るのもつらいし、話し始めれば、彼らがどれほどの痛みを持っているかは容易にうかがえるという。
逆境を乗り越え、立ち直るのに必要なスキルを持たないこの人たちは、時間が過ぎてもなお、苦しみ続けるのだ。
研究者たちの意見
米心理科学会誌「Perspectives of Psychological Science」(心理科学の視点)に掲載された最新の研究結果によると、時間が人を癒す効果はないことが確認された。アリゾナ州立大学の研究チームによれば、一般的に人には、それほどの自然治癒力はない。
そのため、自然災害や長期の失業など、人生を変えるような出来事を経験した場合、回復するまでに予想以上の時間がかかる可能性も十分にある。研究によれば、人生にストレスをもたらす要因は健康状態を大幅に悪化させることがあり、その状態は数年にわたって続くこともあり得る。
研究者らは、これまで「ほとんどの人には回復力がある」と信じられてきたことこそが、多くの人がより効率的な回復を図るために必要な支援を受けることを妨げてきた可能性があると警告している。
--{ただ時が経つのを待つのは、最善の選択肢ではない}--
回復に向けてのタイムテーブルはない
「すぐに良い方に向かうよ」という善意に満ちた言葉が、心の傷を癒すことは「受動的な行動である」との通説を不変のものにしてしまっている可能性がある。残念ながら、気持ちが楽になるのを待っていても、良い結果は得られない場合がある。
回復すると仮定して、さらにこの頃までに回復しているべきとの時間枠を定めてしまうことは、危険な行為だ。
なかなか回復しなければ、本人が自分自身を厳しく批判してしまう可能性が非常に高いだけでなく、他の人が長期にわたって苦しんでいることに対し、共感できなくなってしまう危険性もある。ただ時間が過ぎるのを待っていることは、最善の選択肢とはいえないのだ。
精神力を強化する
生まれつき強い精神力を持っている人はいない。だが、精神力を強化できる能力は、誰にでもある。体力と同様に、強化するための練習方法もある。
自分はどんなことに感謝の気持ちを持てるのか考えたり、自分自身を慈しむ訓練をしたりするといった健康的な習慣を身につけることは、長期的には精神的な強さを高めることになる。
現実的に考え、感情をコントロールし、生産的な行動を心がけることが、困難を乗り越え、回復することに向けてのカギとなる。強くなれば、あらゆるストレス要因に対しての抵抗力も高まる。
回復力を高めるためには、計画的な練習が必要だ。そして、努力する価値はある。精神力を高めることは、心の傷を癒すあなたの能力を高めることになるのだ。
Amy Morin
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