2016年3月17日12時12分
社会意識論や大衆社会論で知られる社会学者で、京都大名誉教授の作田啓一(さくた・けいいち)さんが15日、肺炎のため、京都市内の病院で死去した。94歳だった。故人の遺志で葬儀は行わない。
山口市生まれ。京大文学部卒。1959年に京大助教授となり、66~85年に教授。デュルケムやパーソンズらの研究をもとに理論社会学や文化社会学の研究を進めた。哲学や文学の領域から日本文化、大衆意識への考察も進め、現代日本の社会学に影響を与えた。
69年の京大紛争でエスカレートする暴力に抗議し、「無力な私は、私自身を苦しめるほかはない」と、2月の厳冬期にハンストを決行。紛争での体験は後に、ドストエフスキーの描く人間像を通し、組織と個人の内面の対立や暴力への思索へ深まった。
京大退職後は甲南女子大教授を務めた。主な著作は「恥の文化再考」「価値の社会学」「個人主義の運命」「ドストエフスキーの世界」など。自らのホームページで「激高老人」と称して時事コラムを連載していた。