栃木県日光市(旧今市市)で2005年、小学1年の女児(当時7歳)を連れ去り殺害したとして、殺人罪に問われた勝又(かつまた)拓哉被告(33)の裁判員裁判で、宇都宮地裁の松原里美裁判長は18日、検察側が証拠請求した殺害を認める自白調書を採用することを決定した。松原裁判長は理由を説明しなかったが、裁判員と裁判官らは、法廷で再生された取り調べを記録した録音・録画の様子などから、供述には任意性があり、被告が自分の意思で話したと判断したとみられる。
事件発生から殺人容疑での逮捕まで8年半が経過し物的証拠が乏しい中、検察側は立証の柱と位置づけた自白調書が採用され、大きなハードルを越えた。検察側は今後、自白内容が真実であるという「信用性」の立証に移る。
これまでの公判で再生された録音・録画は7時間超。うち、勝又被告が殺害を自白した14年6月の取り調べの様子は約3時間40分に及んだ。
検察側は、検察官が黙秘権などの権利告知を行い、勝又被告の体調を気遣うなど十分に配慮する中、被告が殺害状況や連れ去り方法などを詳細に供述し、調書にサインしたと強調した。さらに調書作成の際、被告が訂正箇所を申し出るなど調書内容を自分で決めていたとし、「暴行や脅迫、利益誘導などの手段を使って供述を求めたことは一切ない。被告は自らの意思で話していた」と主張した。
これに対し弁護側は、被告が商標法違反で逮捕されてから自白調書が作成されるまでに123日間もの長期間、拘束された上、暴力や暴言のある厳しい取り調べが行われたと指摘。「早く自白したら刑が軽くなる」などの利益誘導もあったとして、自白に任意性はなく、証拠採用すべきではないと主張していた。
勝又被告は無罪を主張しており、判決は31日に言い渡される予定。【野口麗子】
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