大学入試改革 具体的な設計で着実に
毎日新聞
大学入試が変われば高校と大学の教育も改善される。古くからそう論じられてきた。
だが容易ではない。
現大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」を軸に、高校と大学をつなぐ「抜本的な改革」を論議した文部科学省の専門家会議が最終報告を出した。
知識や技能だけでなく、思考、判断、表現の力や主体的な探求性などを重視し、従来のマークシート解答方式のほか、記述式を導入する。
グローバル化や産業構造などの急速な変化にも対応できる人材育成が念頭にある。暗記と択一解答的な学力から、主体的な思考で一つではない「正解」を探る「課題解決型」学力への転換は、時代の要請ともいえよう。記述式だけでなく、マークシート方式でもそうした考えに沿って、設問を改めるという。
その理念には賛成だ。
しかし、2020年度から実施予定という差し迫ったタイムスケジュールの中で、50万人を超すと想定される受験生の記述答案を、安定した採点基準で、短期間に公平に処理する人手やシステムは組めるのか。
民間への委託や人工知能(AI)の活用なども論じられているが、確たる見通しはない。
また記述式出題の教科や量も、当面国語と数学に限り、40〜80字の短文から始める。かたちは自由な記述ではなく、条件をつける。採点しやすくするためだが、「それでどこまで思考力が測れるだろうか」という疑問の声もある。
さらに気になるのは、この論議がまだ高校や大学側の理解を十分に得ているといい難いことだ。
高校は授業方法や学力観の転換が必要になり、大学は「評価テスト」の結果を生かしながら個別入試の独自性を強め、時間をかけた人物評価など多面的な選抜を求められる。
また高校は「高等学校基礎学力テスト」も設けて利用できるようにし、学習改善指導に生かす考えだ。
それらが一体にかみ合って改革は実を結ぶが、それにはまだ遠い。
特に画期的なこととして注目される「評価テスト」の記述式は、実現性に不透明感もあり、将来の受験生が困惑、混乱する事態を避けるためにも実証的な検討を重ねたい。
今後、文科省は改革全体の制度設計を進め、17年度初めには新共通テストの実施方針を示すという。
その間開かれた論議をし、とりわけ高校や大学の現場の実情や意見を踏まえながら具体化すべきだろう。
「結論ありき」ではなく、地に足の着いた着実性を求めたい。何より「ここまで来たら引き返せない」という空気は禁物である。