(拙訳) 社会主義に市場競争力がないなら、北欧の株式が好調なのはなぜか?
もう一つ、駆け足で最近気になっていた記事を拙訳。表は元記事をご参照いただきますよう。
Opinion: If socialism is incompatible with markets, how can Nordic stocks perform this well?
バーニー・サンダース議員は、大統領には選出されそうにないが、彼は「社会民主主義」を政策の議場に乗せた。少なくとも、民主党の議場に。
「社会民主主義」というとき、スカンジナビア周辺の北欧諸国、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドがすぐに思い浮かぶ。
これらの国々が政治的にどうなっているとしても―それに、私はこのアプローチは米国ではうまくいかないと思うが―、彼らの達成しているものは大したものだ。
国による医療や高等教育、育児休暇や相当の失業給付のおかげで、税率は収入の5割に達することも多いが、北欧諸国は世界でもっとも繁栄している。
WEFの競争力インデックスでは、北欧諸国はトップに位置しており、ノルウェー、スウェーデン、デンマークはAAAAの信用力を有している。
他の幸福度尺度においても、北欧諸国はリードしている。フィンランドの教育システムは、世界最高レベルだし、最新の世界幸福度レポートでは、デンマーク人は世界で最も幸福な人々だ。2015年のGoEuroレポートでは、スウェーデンはもっとも強力なパスポートを持っている。
もう一つある。1世紀以上もの間、北欧諸国の株式市場はトップの稼ぎ頭だ。
ロンドン・ビジネス・スクールのエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・ストーントンは、21の既存の株式市場を1900年から調査し、データベースを作成した。
2016年クレディ・スイス世界投資収益年報で、3人の研究者はデータベースをアップデートし、北欧諸国がしばしばグローバルのベンチマークと米国市場を、(指標により)116年間、50年間、15年間上回っていることを示している。
詳細は下表を参照。1900年~2015年、デンマークとフィンランドはグローバル市場の中でトップ8位までに位置し、クレディ・スイス・グローバル・インデックスを上回った。
1966年~2015年、これら3カ国は世界4位までに位置し、ノルウェーもそのすぐ後に位置し、クレディ・スイス・インデックスと米国を凌駕した。
2000年~2015年、ノルウェー、スウェーデン、デンマークは、グローバル市場で5位までに位置し、米国とインデックスの上に立った。(フィンランドは株式市場の多くを占めるノキアの没落のせいで不調だったが)
こうした市場の成功はどう説明できるか?
一つには、天然資源がある。「20世紀は、資源国家が価値を持った時代だった」とディムソンは電話インタビューで答えた。(彼らの調査で、南アフリカとオーストラリアも、長期的に世界市場で好調だったことがわかった)
ノルウェーは、世界で14位の石油産出国で、1日に190万バレルを産出する。
スウェーデン、フィンランドは歴史的に天然資源(木材や鉄鉱石など)の産出国である。
しかし、これらの国々は、特に、人的資源の効果的活用に長けている。超高率の税金にも関わらず―サプライサイドの経済学者なら、これが起業家マインドを損なうと論じるだろう。そしてカリフォルニアはまさにそうだった(冗談)―これらの国々は創造的活動の源泉である。
Incマガジンによれば、ノルウェーは、国民一人当たりの起業家数と起業活動において米国を上回ってきた。
スウェーデンは、IT企業の最前線で、スカイプ、スポティファイ、そしてマインクラフトをつくったMojangを生み出してきた。
デンマークのNovo Nordiskは、世界のトップの製薬会社だ。
スウェーデンから生まれたIKEAとデンマークから生まれたLegoは、世界でも最も成功した企業だ。
明らかに、高税率と大きな社会保障は、資本家の成功を阻害していない。少なくとも、株式市場の成績で見る限りでは。
6人の北欧の研究者が「北欧モデル」という報告書を2007に出した時、彼らは、福祉国家と高税は実際にはこれらの国の成功を後押ししたと報告している。
「北欧諸国はグローバライゼーションと福祉国家をともに実現した。そして、リスク共有のメカニズムが全体として保障を提供し、好ましい状況をもたらす装置として働いた」と報告は述べている。
「全体によるリスク共有によって、国民はグローバライゼーションを受容した。変化する市場から経済が恩恵を受けるための調整を促進した」と報告書は続ける。「大きな公共部門を持つ一方、北欧諸国は競争を促進するための市場経済や制度を取り入れた」
つまり、これらの国々は実のところ「社会主義」というよりも、高税と大きなセーフティネットを持ったきらびやかな資本主義経済であり、自由市場改革を行ってきている。
米国でもうまくいくだろうか?それは疑問だ。米国はこれらの国々をすべて合わせたよりも12倍の人口を持ち、そして我々は地球上でもっとも多様な国の一つだ。一方、北欧諸国は、もっとも同質で、勤勉と個人の責任に価値を置く国々の仲間だ。
スカンジナビアでは、この制度は強い支持層に支えられている。我々の間では、こうした問題に対しては厳しい意見の対立がある。
また、北欧諸国は高齢化に直面していて、福祉国家の源が損なわれるだろうし、反移民政党が勢力を増す中、社会的結合力が弱まってきた。この傾向は、火曜日にブリュッセルで起きたようなテロ攻撃の後では、今後も続くだろう。
楽園ではないし、世界の誰もが受け入れられる制度でもない。しかし数値は数値で、事実は事実だ。北欧諸国の「社会主義」は、これらの国々ではうまく働いてきたし、投資家にとっても見返りの大きいものとなっている。
Opinion: If socialism is incompatible with markets, how can Nordic stocks perform this well?
バーニー・サンダース議員は、大統領には選出されそうにないが、彼は「社会民主主義」を政策の議場に乗せた。少なくとも、民主党の議場に。
「社会民主主義」というとき、スカンジナビア周辺の北欧諸国、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドがすぐに思い浮かぶ。
これらの国々が政治的にどうなっているとしても―それに、私はこのアプローチは米国ではうまくいかないと思うが―、彼らの達成しているものは大したものだ。
国による医療や高等教育、育児休暇や相当の失業給付のおかげで、税率は収入の5割に達することも多いが、北欧諸国は世界でもっとも繁栄している。
WEFの競争力インデックスでは、北欧諸国はトップに位置しており、ノルウェー、スウェーデン、デンマークはAAAAの信用力を有している。
他の幸福度尺度においても、北欧諸国はリードしている。フィンランドの教育システムは、世界最高レベルだし、最新の世界幸福度レポートでは、デンマーク人は世界で最も幸福な人々だ。2015年のGoEuroレポートでは、スウェーデンはもっとも強力なパスポートを持っている。
もう一つある。1世紀以上もの間、北欧諸国の株式市場はトップの稼ぎ頭だ。
ロンドン・ビジネス・スクールのエルロイ・ディムソン、ポール・マーシュ、マイク・ストーントンは、21の既存の株式市場を1900年から調査し、データベースを作成した。
2016年クレディ・スイス世界投資収益年報で、3人の研究者はデータベースをアップデートし、北欧諸国がしばしばグローバルのベンチマークと米国市場を、(指標により)116年間、50年間、15年間上回っていることを示している。
詳細は下表を参照。1900年~2015年、デンマークとフィンランドはグローバル市場の中でトップ8位までに位置し、クレディ・スイス・グローバル・インデックスを上回った。
1966年~2015年、これら3カ国は世界4位までに位置し、ノルウェーもそのすぐ後に位置し、クレディ・スイス・インデックスと米国を凌駕した。
2000年~2015年、ノルウェー、スウェーデン、デンマークは、グローバル市場で5位までに位置し、米国とインデックスの上に立った。(フィンランドは株式市場の多くを占めるノキアの没落のせいで不調だったが)
こうした市場の成功はどう説明できるか?
一つには、天然資源がある。「20世紀は、資源国家が価値を持った時代だった」とディムソンは電話インタビューで答えた。(彼らの調査で、南アフリカとオーストラリアも、長期的に世界市場で好調だったことがわかった)
ノルウェーは、世界で14位の石油産出国で、1日に190万バレルを産出する。
スウェーデン、フィンランドは歴史的に天然資源(木材や鉄鉱石など)の産出国である。
しかし、これらの国々は、特に、人的資源の効果的活用に長けている。超高率の税金にも関わらず―サプライサイドの経済学者なら、これが起業家マインドを損なうと論じるだろう。そしてカリフォルニアはまさにそうだった(冗談)―これらの国々は創造的活動の源泉である。
Incマガジンによれば、ノルウェーは、国民一人当たりの起業家数と起業活動において米国を上回ってきた。
スウェーデンは、IT企業の最前線で、スカイプ、スポティファイ、そしてマインクラフトをつくったMojangを生み出してきた。
デンマークのNovo Nordiskは、世界のトップの製薬会社だ。
スウェーデンから生まれたIKEAとデンマークから生まれたLegoは、世界でも最も成功した企業だ。
明らかに、高税率と大きな社会保障は、資本家の成功を阻害していない。少なくとも、株式市場の成績で見る限りでは。
6人の北欧の研究者が「北欧モデル」という報告書を2007に出した時、彼らは、福祉国家と高税は実際にはこれらの国の成功を後押ししたと報告している。
「北欧諸国はグローバライゼーションと福祉国家をともに実現した。そして、リスク共有のメカニズムが全体として保障を提供し、好ましい状況をもたらす装置として働いた」と報告は述べている。
「全体によるリスク共有によって、国民はグローバライゼーションを受容した。変化する市場から経済が恩恵を受けるための調整を促進した」と報告書は続ける。「大きな公共部門を持つ一方、北欧諸国は競争を促進するための市場経済や制度を取り入れた」
つまり、これらの国々は実のところ「社会主義」というよりも、高税と大きなセーフティネットを持ったきらびやかな資本主義経済であり、自由市場改革を行ってきている。
米国でもうまくいくだろうか?それは疑問だ。米国はこれらの国々をすべて合わせたよりも12倍の人口を持ち、そして我々は地球上でもっとも多様な国の一つだ。一方、北欧諸国は、もっとも同質で、勤勉と個人の責任に価値を置く国々の仲間だ。
スカンジナビアでは、この制度は強い支持層に支えられている。我々の間では、こうした問題に対しては厳しい意見の対立がある。
また、北欧諸国は高齢化に直面していて、福祉国家の源が損なわれるだろうし、反移民政党が勢力を増す中、社会的結合力が弱まってきた。この傾向は、火曜日にブリュッセルで起きたようなテロ攻撃の後では、今後も続くだろう。
楽園ではないし、世界の誰もが受け入れられる制度でもない。しかし数値は数値で、事実は事実だ。北欧諸国の「社会主義」は、これらの国々ではうまく働いてきたし、投資家にとっても見返りの大きいものとなっている。
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