大阪の繁華街・ミナミで外国人向けの違法民泊が横行している。マンションの一室だけでなく、韓国料理店がインターネットで客を集め、空きスペースに宿泊させる手口も。大半は旅館業法に基づく営業許可を取っていないとみられる。大阪府警も状況を把握しており、同法違反の疑いがあるとみて情報収集を進めている。

 中国や韓国、インドなどさまざまな国の料理店が立ち並ぶミナミの一角、島之内地区周辺。毎朝、マンションや飲食店から、重そうなスーツケースをひいた旅行客風の若者が次々と姿を現す。いずれも友人同士やカップル風。夜のにぎわいとはかけ離れた静かな朝に大声で会話するグループもいる。耳を傾けると、中国語や韓国語のようだ。最近は平日、休日を問わず、こうした風景がみられる。

 韓国料理の看板を掲げた店から出てきた若者に話を聞いた。韓国・ソウルから大阪や京都の観光に訪れた男子大学生ら6人のグループだ。その1人の男子学生(22)によると、「安くて快適な宿」をネット掲示板で尋ねたところ、「宿泊経験者」を自称するネットユーザーからこの店を紹介されたという。

 5泊6日の滞在で1人1泊2500円。韓国風のり巻きなどの朝食付きで格安といえる。1階は飲食スペース。3階の一室に2段ベッドが並び、6人全員で泊まったという。学生らは「ご主人が韓国語を話せる人で、心強く快適に過ごせた」と満足げに語った。

 大阪市によると、この店は旅館業の営業許可は取得しておらず、違法民泊の疑いが濃厚だ。店の前に韓国料理のメニュー看板を掲げているが、宿泊に関する案内はない。女性経営者は産経新聞の取材に「今は飲食店はやっていない。全く別の仕事をしている。あなたには関係ない」と話した。

 ホテル業界関係者によると、ミナミで民泊が目立ち始めたのは2〜3年前。当初はマンションの空き室などを利用するスタイルだったが、最近は韓国料理店がネット広告などで客を募り民泊に手を出すケースも目立つという。韓国人向けのネット掲示板によれば、ミナミにある同様の民泊は少なくとも約10軒に上る。

 市や府警には違法民泊を疑う通報が多くあるが、捜査関係者は「利用者は短期滞在の外国人観光客。事情を聴くのが難しく、摘発のハードルは高いと言わざるを得ない」と話している。

(大森貴弘)