春野ユリ - HOW I WORK,Webサービス,連載 11:00 PM
仕事はスピードが命:GV社(Google Ventures)のデザイン・パートナー、ジェイク・ナップさんの仕事術
シリコンバレーで日々展開するビジネス状況を知らないと、Googleが単にスタートアップ企業を買収しているだけではないことがわからないかもしれません。同社はベンチャーキャピタルへの投資にも深く関わっています。GV社はGoogleのそれぞれの事業を統括する、持ち株会社Alphabet Inc.のベンチャーキャピタルを担当しており、創立以来、将来有望な会社に20億ドル以上投資しています。
ジェイク・ナップ(Jake Knapp)さんはGV社のデザイン・パートナーで、抽象的なアイデアをたった5日で検証可能な段階に落とし込むメソッドを誇る同社の「迅速な」プロセスを陰で支えています。彼はSlackやNestのようなスタートアップと仕事をして、GV社の成功の図式に関する本を書きました(同社パートナー仲間のBraden Kowitz氏とJohn Zeratsky氏との共著)。本の題名はまさに『Sprint』です。それではどのようなやり方でジェイクさんと彼のチームは、目立った失敗もせずに、一見すると受容能力を上回るようなことを成し遂げているのでしょうか。ジェイクさんに仕事術について聞いてみました。
居住地:サンフランシスコ
現在の職業:GV社(旧社名Google Ventures)のデザイン・パートナー。『Sprint』の著者
仕事の仕方を一言で言うと:迅速(Sprints)
現在の携帯端末: iPhone 6
現在のコンピューター:大量の仕事をするときはMacBook Pro15です。スクリーンが大きいところが気に入っています。それから、遠方にPCを持っていく必要があるときはいつでもMacBookを持っていきます。心配性なもので。
――「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?
気楽に使えるオフィスの備品。高過ぎないところが良いです。
- ペーパーメイト社のフレアペン:このペンは細い線が書けますが、細すぎるわけではありません。値段は安いです。本格的なのに気取っていません。
- プレーンな白いコピー用紙
- プレーンな黄色い付箋
- ホテルにあるメモ帳:これは一番カジュアルな種類の紙です。ホテルのメモ帳に大事なことを書くとは誰も思っていませんから、家計の助けになります。
- ホワイトボード:なるべく書く面積が広いこと。
―― 仕事場はどんな感じですか?
自宅では、ガレージにつながった、天井が低く照明の悪い仕事部屋で書き物をしています。あまりにも気が滅入る場所なので、写真はお見せできません。
でも、GV社のオフィスでは、このすばらしいスプリントルームでほとんどの仕事をしています。もともとテーブルがなくて大きなホワイトボードのある会議室です。この仕事場ならお見せできます。私までずいぶんカッコよく見えるでしょう。
―― お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?
iPhoneは、メールとサファリを切ってありますし、FacebookやTwitterなど面白いことを果てしなく流し続けるものをすべてアンインストールしました。しばらくこの状態で過ごしています。注意力のスパンやセルフコントロールに、あまり良くないものをカットしているので、とても効率が良いです。
―― 愛用中のToDoリストマネージャーは何ですか?
友人であり本も一緒に書いたJohn Zeratsk氏が作った「大事なことを1つ選択する」というやり方をしています。どんなToDoリストを使っていようとも(紙とアップルのシンプルなリマインダーのどちらかを使っています)、1日全部を使って取り組むのには大事なことをたった1つだけ選択しなければなりません。それが、私の集中の助けとなっているもう1つの秘訣であり、Sprintsでしていることの延長でもあります。Sprintsではたった1つのプロジェクトにまるまる1週間集中します。
―― 電話とPC以外で「これは必須」というガジェットはありますか?
Time Timerです。これは見事なまでにシンプルなタイマーで、もともとは学童用に作られました。Sprintsでは、私は社員の活動の「タイムボックス」として使っています。自分が書き物をしているときも基本的には同じように使っています。時間という抽象的な観念を具体的で目に見えるものに変えてくれます。これ以上貴重なものはありません。
―― いつも何かに取り組んでいるほうですか?それとも1つプロジェクトを終えると次のことを心配せずに心を自由に遊ばせるタイプでしょうか?
やりたいプロジェクトがとてもたくさんあります。今手がけているものが終わる前に、常に次のものが控えています。
―― 日常のことで、「これはほかの人よりうまい」ということは何ですか?
それを聞かれるとがっくりきます。なぜなら、今まで自分が得意なことは何でもやってみましたが、どれを取っても世界一うまいと言えないのは確かです。今、ホワイトボードに図表を書く練習をしている人がどこかにいるとしたら、私にやり方を教えてほしいです。
―― 仕事中、何を聴いていますか?
音楽を聴くのは仕事を始めるきっかけを作るためなので、一旦仕事を始めると音楽は消します。どんな種類の仕事にもそれ専用のサウンドトラックがあって、そのアルバムがあるとしたらそれを何千回、何万回聞いているはずなので、あまり注意を払っていません。『Sprint』を書くときは、『Tame Impala』を聴きました。イラストレーションのときは、『Built to Spill』です。気恥ずかしいので極秘にしているフィクションのプロジェクトを手がけるときは、『M83』です。Sprintでみんなでスケッチをするときは、Dave Brubeck Quartetの『Blue Rondo a la Turk』です。
―― 現在、何を読んでいますか?
それを聞かれると、たくさんの本を読みかけにしていると言うべきかもしれません。村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』、Scott Berkunの『Confessions of a Public Speaker』、Susanna Clarkの『Jonathan Strange & Mr. Norrell』、Cal Newportの『Deep Work』...気合を入れて、どれかをちゃんと読破しないといけないですね。
―― どのようにして充電していますか?
下の息子とおもちゃの電車で遊んだり、上の息子と学校まで一緒に歩いたりすること。
―― 睡眠習慣を教えてください。夜型ですか?朝型ですか?
私にとって、夜は仕事に向いている時間です。夜の静けさが好きなので。秘訣はバケーションタイマーです。防犯のために、夜になると明かりがついて人が家にいるように見せたいときに使う物です。ルーターをバケーションタイマーに差し込んで、夜9時半になると電源が落ちるようにセットします。その時間になったら、「Seahawks news」を読みふけるのをやめて原稿を書き上げるようにします。
―― 今日あなたがされたのと同じ質問をするとしたら誰にしたいですか?
『ハリー・ポッター』を書いたJ.K. Rowlingさんです。プレッシャーがある中で仕事をこなす術を知っている人だと思うので。
―― これまでにもらったアドバイスでベストなものを教えてください
父の言葉で「仕事を楽しむ方法を見つけなさい。人生のほとんどの時間は仕事をして過ごすのだから」です。さらに重要なのは、父と母が2人ともそれを実践したことです。身をもって私に教えてくれたんですね。
―― 読者に伝えたいことはありますか?
私はとても背が高いので(おかしいぐらい高いです)、実際の私を見て私の身長のことをコメントしたいと思ったら、どうぞご遠慮なく。私は全然気にしませんから。
Andy Orin(原文/訳:春野ユリ)
Photo by Graham Hancock
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