日本サッカー界の主流は、A代表とも呼ばれるハリルジャパンだ。その戦いに日本全土が喜び、時には悲しむ。高い知名度があるからこそ、スポンサーは何十億とも言われる巨額の金を複数年でつぎ込み、日本サッカー協会は年間200億円以上の予算で運営される巨大団体に成長した。
主流ではないが、なでしこ(女子)が、ホームで開催されたリオ五輪アジア予選で敗退し、フットサルはW杯出場を逃した。フットサルはさらに注目度が低く、W杯出場を逃したことを知る人は多くないはず。A代表メンバーの面々は…本田圭佑、香川真司、長谷部誠、吉田麻也ら、小学生でもすらすら名前を挙げることができるが、フットサル代表の名前を知る人は少ない。ほとんどの人は、カズ(三浦知良)が何年か前に代表に入ったことがある、程度の認識しかないはず。
一方で、なでしこはどうか。アジア予選はNHKが地上波で全試合生中継し、注目はされたが、盛り上がりは今ひとつ。あまりサッカーを知らない友人からは「W杯予選で負けて残念だ」とも言われた。私が「W杯予選ではなく五輪予選だ」と訂正したら「あっ、そうなんだ」と流し気味の返事がきた。
なでしこは、W杯と五輪の本大会で結果を出し、人々に目を向けてもらうようになったが、大会が終わったら、それまで。「なでしこを文化にしたい」と何人もの選手、関係者が口にしているが、定着していない。なでしこリーグにはなかなか人が集まらず、観客1000人を割る試合もある。ほとんどの競技団体には、常任の責任者がいるが、なでしこリーグの責任者は非常勤勤務で、腰を据えた強化はできていない。
フットサルは、もっとひどい。Fリーグ(日本フットサルリーグ)の12クラブ実行委員(社長)が、代表監督やフットサル連盟の人事にまで口を出している。Jリーグ創立時に、当時の川淵チェアマンと読売の渡辺社長が、リーグの進む方向で意見衝突して話題になったが、川淵氏の求心力もあり、Jは地域密着の信念を貫くことができた。27日付で日本協会の最高顧問になる小倉純二氏が、今後はフットサルのトップになり、改革を進める方針。今年は、そのリーダーシップが問われる1年になる。
なでしこもフットサルも、日本代表を象徴する青いユニホームを着てピッチに立つ。胸には日の丸が輝く。A代表として最多出場記録を持つ遠藤保仁は「国を代表して」という言葉を何度も口にしている。そのプライドは、性別、種目は違っても、代表選手なら全員持っていると、私は信じている。その選手たちの汗や努力が無駄にならないように、それを支える人々が、黙々と自分の仕事をこなしてほしいと、切に願う。【盧載鎭】
◆盧載鎭(の・ぜじん)1968年9月8日、韓国・ソウル生まれ。88年に来日し、96年入社。約20年間、サッカー担当。最近、北京五輪フェンシング銀メダリスト太田雄貴の著書「騎士道」を読んで太田が好きになりました。