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「隔離法廷」手続き形骸化

最高裁、一律に裁判所外で開く事務処理の可能性

 ハンセン病患者の刑事裁判が伝染の恐れを理由に裁判所外の「特別法廷」で開かれていた問題で、最高裁事務総局に在籍していた元裁判官が毎日新聞の取材に「特別法廷の設置は事務レベルで決めていた」と証言した。本来は最高裁長官ら裁判官15人が参加して司法行政上の方針を決める「裁判官会議」で事件ごとに当否を決定するのが原則とされているが、実際にはハンセン病患者の裁判の審査は形骸化し、一律に裁判所外で開く事務処理がなされていた可能性が出てきた。【江刺正嘉、山本将克】

 最高裁は、隔離施設などで開かれた特別法廷がハンセン病患者に対する不当な差別に基づくものだったか検証を進めている。昨年7月に設置した有識者委員会の意見を踏まえ、4月にも検証結果を発表する予定。最高裁はこの元裁判官からも当時の経緯を確認しているとみられる。

 憲法は「裁判は公開の法廷で行う」と定め、裁判所法は「法廷は裁判所で開く」と規定している。個別の事件を担当する地裁の裁判官ではなく、最高裁の司法行政部門が必要と判断すれば、極めて例外的に裁判所外で法廷を開くことができる。裁判所法の規定により、最高裁の司法行政事務は、最高裁長官が総括する裁判官会議が担うとされており、「開廷場所の指定」も原則として裁判官会議を経る必要があるとされる。

 取材に応じたのは1970年前後に司法行政事務を補佐する最高裁事務総局に在籍し、地裁などからの上申を受けて特別法廷設置の許可手続きに関わった元裁判官。「特別法廷設置の判断は、裁判官会議に掛けなくて良いことになっていた。裁判官会議が権限を事務総局に委任した形になっていた」と証言した。ハンセン病国家賠償訴訟の熊本地裁判決(2001年)は、60年以降の強制隔離政策を違憲としたが、当時の最高裁裁判官らは事務総局に特別法廷設置の判断を任せ、差別的な運用がされていた疑いがある。

 最高裁の調査によると、ハンセン病を理由に地裁などが特別法廷の設置を求めたケースは全て最高裁が設置を許可していた。有識者委員会の委員からは「裁判の公開原則を満たしていたか検討すべきだ」などの意見が出ているという。

 元裁判官は「特別法廷を開くことは異常な事態なので、どうして必要なのか上申した裁判所に説明を求めた記憶がある。ハンセン病であれば一律にという認識はなかったが、拒否反応が強く、(裁判所内の法廷で)やってみろとは到底言えない感じだった」と話した。

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