

- 台本を読んだ印象からお願いします。
- 東京に出てきた時に思ったこと、感じたことが、練と被るところがあると感じました。「何故、練がこう言ったんだろう? こういう行動したんだろう?」と考えながら読み重ねていくうちに、練のことが凄く好きになりました。練はやっぱり、真ん中が優しい。有村架純さんが演じる音との掛け合いも、この人にしかできない、この人だからこそ、互いに何か似たところがあるからこその掛け合いが、とても面白かったです。練と音は、自分が立っている場所が自分の居場所だとは思えず、そこから抜け出そうとしている若者たち…。そういうところにもすごく共感しました。坂元裕二さんの本には“見て見ぬ振りをしている感情”がたくさんあって…。本当に見て見ぬ振りをしてしまいたくなるような…本当だったら味わいたくない感情や、何もかもを東京のせいにしていたあの頃の感情だったり、そんな色々な感情がすごく詰まっているんです。
- 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』というタイトルも
印象的ですね。
- 「どういう風に略そうかな?」と思いました。演じる上では、題名よりも中に書いてあることの方が気になります。題名は、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」という未来を想像したひとつの言葉になっています。自分としてはひとまずタイトルのことは置いておき、「今」を大切にと思いながらやっています。でも、どういう風に略すのかな、世の中の方が。「いつ恋」とは聞いたけど、そのあとにもうひとつ続いてほしいかな。
- 有村架純さんとは初共演ですね。
- 以前からお世話になっている廣木隆一監督が「インする前に、会って一緒に食事でもしようか?」と有村さんを誘ったときに「いや、私、現場で会いたいんです」と言ったという話を聞いて…。僕も、その方が好きなんです。現場で会うよりも前に会って、安心するよりも、現場で「初めまして。今回よろしくお願いします」という方が自分としてはよいと思っているから。事前にお会いする場合が多い中、それを選ばない。その話を聞いた時、「ああ、ステキな子なんだな。ありがたいな、そういう方を選んでくれてありがたい」と思いました。
- 高良さんも地方から東京に出てきましたよね。
出てくる前の東京の印象と、出てきてからの印象は?
- 上京する前の東京のイメージは、ニュースで出てくる、渋谷のスクランブル交差点や、映画、雑誌、歌詞の中だったり…。漠然とした印象でした。いま思うのは僕も含め馴染めない頃は「都会の人は冷たい」と言いたいものなんです。実際は全く冷たくない。みんな優しいのに。上京したのは高校を卒業してからになりますが、その頃は悶々としていて、うまく行かないことを大体東京のせいにしてました。空気汚い、水汚い、人が多い、人混みが気持ち悪い。当時はそこで生きていく覚悟がなかったから、そうだったのかもしれないですね。
- そこから変わってきました?
- 変わりました。変わらないとキツいですしね。住んでいるところをずっと否定しているのも、カッコ悪い。いまは、東京のいいところばかりを知っていると思います。
- 練というキャラクターについて、どのような印象をお持ちですか?
- どう変わっていくかを楽しみたいです。練がどうやって成長していくのか、どういう人に出会って、どう変わっていくのか。それを表現出来るのは連ドラのおもしろいところだと思っているんです。自分が練を演じる上で大切にしたいと思うのは、真ん中の部分。そこがぶれなかったらいいなと思います。「たとえそれが、すごく細くても折れなければいいな」と。それは、相手を思うこと。相手のために言う言葉だったり行動だったり。そこは、押しつけじゃなくて、練の真ん中の部分だけでしゃべりたいです。それができたらいいなと思っています。
- 音と練を対比したときに、こういうところが心の持ちようが
違うとか、ここは共通してるんじゃないかというところは?
また、ご自身と比べてみて、気づいたところがあればお願いします。
- 違うところは探してないです。でも違うところがあっても当たり前だと思っています。似てる部分は、実際にいま自分がいる場所が、もしかしたら自分の居場所ではないのかもしれないと思っているところ。そう思っていても、その場所で生きて行かなくてはならないのがわかっていて、それに対して必死なところだと思う。それは、練と音に共通する場所だと思うんですよね。もしかしたら、生きてきた境遇とか、両親がいないというのもそうなのかもしれない。1話と2話を読んで、「ああ、この人たち運命的だな」と思ったんです。自分と練はやっぱり違います。練の方が正しいです。自分より正しい人間。自分が「大切にしたいな」とか「忘れたくなかったんだけどな」とか「あ、忘れちゃったんだな」ということを、練は必死にやってる。だから、練をやりながら自分自身が、誇れる自分にもなれるというか。そんな感覚です。
- 演じる上で、心がけていることは?
- 僕も上京してきているから、なんとなく練の気持ちだったり音の気持ちだったり、他の人の気持ちだったり、多分、登場人物1人1人の感情が、どこか僕の中にもあると思うんです。だけど、それを単純に「みんなこうだよね」「こういう気持ちあったよね。でも、一生懸命生きようね」という事だけにはしたくない。それをしたら、すごく嫌だなと思ったんです。自分が意識したいのは、練がその場所でどう思って、どういう言葉を発しようとしたか。ただそれだけでいいなと。すごく半径が狭い事でよいと思うんです。でもそれは作品として、人に見てもらうものなので、どうしてもその事を意識したり、同じ傷を抱えている人たちのために…となりかけるけれども、その事はなるべく置いといて、半径が狭い中で、自分の居場所を探している人たちの事を、ちゃんと、ただその人の役だけでやれたらいいなと。それが一番やりたいことです。月9という、本当にど真ん中のラブストーリーの中で、この人たちだけのすごく狭い中で終われたらいいなと思います。
- 音と練にはどうなっていってほしいですか?
- それは自分の中でも楽しみであり、あまり考えてないことでもあるんです…。でも、この人がいたおかげで、この人がいてくれたからこそ、自分の人生がいいものになったというか…。この人のおかげでこういうことを感じ、自分の人生はつまらないものだと、あきらめていた部分が、互いに、いいものになっていくといいなと思います。それは、結ばれるとか結ばれないとかではなく、練や音にしか感じることが出来ないことや、音だからこそ感じられることとか、そういうことがこれからもっともっとたくさん増えていくんだろうなと思います。
- 練は、手紙を持ってわざわざ北海道まで行きます。
もし高良さんだったら?
- 僕だったらできないですね。練だからできることだと思う。両親がいないという境遇もありますが、練は、その人にとって大切なものだったり、その人のための行動ができる人だと思います。
- 最後に、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
- このドラマがどういうふうに進んでいくのか、自分自身も楽しみです。いま自分のいるこの場所が、自分の居場所でないと思うことがたくさんあると思うんです。もしかしたら上京してきたばかりの人たちは特に思ってるのかもしれない。夢が叶わないなと思ってる人たちもいるかもしれない。このドラマの中には、そういう登場人物がたくさんいます。いま自分が立ってる場所で、自分が精一杯一生懸命生きなければいけない、生きている、そういう人たちなんです。その人たちの一生懸命さというか…。その人たちのそういう生き方と人生に触れていただけたらうれしいなと思います。そしてドラマを見て、何かのパワーになったり、次の日や、ドラマを見た後がいい時間になったり、さらにはいい人生になったらいいなと思います。それができるのが月9だと思っています。