改革ありき、日程ありきで進むべきではない。

 大学入試センター試験にかわる「大学入学希望者学力評価テスト」をめぐり、具体策を検討していた文部科学省の有識者会議が最終報告をまとめた。

 新テストの議論は、政府の教育再生実行会議から始まり、文科相の諮問機関の中央教育審議会、そして有識者会議へと4年がかりで続けられてきた。

 にもかかわらず、検討すべき課題がなお多く残されている。

 それでも文科省は2020年度に新テストをスタートさせる計画を変えておらず、来春には実施方針をつくるという。

 果たして、できるのか。

 考える力を問う入試を、という理念は大切だ。だが、いま必要なのは、それを具体的にどう実現するかである。

 理念倒れではいけない。何ができ、何ができないかを見極め、可能なことを着実に進めてほしい。受験生や高校、大学を振り回す結果は避けるべきだ。

 議論の焦点になっているのは記述式問題の導入だ。マークシート式と違い、自分で書くことで考えを表現する力を見る。

 新テストに盛り込むことで高校にメッセージを送り、知識の詰め込みに傾きがちな授業の改革を促したいと文科省はいう。

 まず短文から始める。自由記述ではなく条件を設け、それをふまえて書かせる。マークシート式より先に別日程で実施し、採点時間を稼ぐ。そんな案も最終報告は示した。

 だが、皮肉にも実現可能性を求めるほど、思考力や判断力、表現力は測りにくくなる。

 採点基準をどうするか、50万人を超える答案を処理するのに採点者をどう確保するかなど、実施段階でのハードルも高い。

 そもそも教育再生実行会議が目指したのは、新テストを資格試験のように複数回用意して選んで受けられるようにし、多面的な選抜は各大学の個別試験が担うという全体図だった。

 最終報告は、その案も捨てていない。ふくれあがる新テストに実現性はあるのか。個別試験と、どう役割を分担するのか。早急に詰めてもらいたい。

 気になるのは個別試験だ。

 最終報告は各大学に対し、知識を問うだけでなく多面的、総合的に評価するよう求めた。

 それには専門の組織や人材が必要になるが、国はどこまで支援する覚悟があるのか。

 文科省は高校、大学教育と入試を三位一体で変える大がかりな改革を目指す。

 だからこそ見切り発車は避けるべきである。